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構想30年!! 空前絶後・前代未聞の全体小説、3000枚超の遺稿と共に遂に刊行! 橋本治『人工島戦記──あるいは、ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかのこども百科』9月24日(金)発売

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本作品について

本作品は集英社の「小説すばる」1993年10月号から1994年3月号まで「人工島戦記」として連載された約500枚の原稿に、その後十数年にわたって著者による大幅な加筆、修正が加えられたものです。

2019年1月29日に橋本治さんが逝去されたことで、残念ながら本作は未完となりましたが、ご遺族の了解を戴き刊行の運びとなりました。

尚、「小説すばる」連載時に副題はありませんでしたが、今回「──あるいは、ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかのこども百科」という副題が入っているのは、最も新しい加筆のある原稿の束に「人工島戦記──あるいは、ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかのこども百科」と書かれた扉が付けられていたことによります。

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原稿に残された著者自筆の扉。本書の表紙と化粧扉に使用されています。


内容紹介

「人工島? そんなのいらないじゃん」
架空の地方都市を舞台に、戦後から平成に到るこの国の普通の人々の意識を描いた未完の大長編。

千州せんしゅう最大の都会である比良野ひらの市では、志附子しぶし湾を埋め立てて「人工島」を作る計画が着々と進んでいた。それを知った国立千州大学二年生のテツオ(駒止鉄生こまどめてつお)とキイチ(磐井生一いわいきいち)は、すでにある市民運動に共感することが出来ず、新しい反対運動を立ち上げる。彼らにとって唯一ピンと来るのは、「人工島? そんなのいらないじゃん」という、そのことだけだったのだ。

大学ではテツオとキイチを中心に同好会が組織され、人工島建設への反対運動が動き始めるが、話はやがて彼らの父母、祖父母、兄弟、近所の人々の人生にまで脱線し、街全体の歴史とそこで生きる人々の姿が浮かび上がっていく。

本書目次

第いち部「低迷篇」
 第一章 なに考えてんだ?
 第二章 そんで?
 第三章 東京だよお父っつぁん
 第四章 とりあえず市長は主役じゃなくて
 第五章 テツオとキーポン
 第六章 情けはトリのためならず
 第七章 意識の低いバカ息子は自問する
 第八章 悪魔が来たりて知恵を出す
 第九章 敵はオヤジだ!
 第十章 干潟でも野鳥でもなく 
 第十一章 比良野ひらの市はどうあっても発展する!
 第十二章 そんなことは誰も知らない
 第十三章 名探偵キーポン
 第十四章 悪い市長辰巻竜一郎たつまきりゅういちろうの謎の野望
 第十五章 こどもには分かりにくいこと
 第十六章 話は意外とかんたんだった
 第十七章 恐怖の人工島建設計画
 第十八章 なんで?
 第十九章 さァ金勘定をしよう
 第二十章 老中様の手の中で
 第二十一章 「平成五年の変」はまだ──
 第二十二章 テツオは目覚めかけた
 第二十三章 現地人は語るザ・ネイテイブズ・アー・スピーキング
 第二十四章 現地人は無関心だザ・ネイテイブズ・アー・ムカンシング
 ……(中略)……
 第三十八章 それでも車は進んで行く

第に部「イライラ篇」
 
第三十九章 そして第二部が始まる
 ……(中略)……
 第六十二章 比良野市のマスコミは市長の悪事が露顕ろけんするのを待望する

第さん部「大山篇」
 
第六十三章 謎の美じゃない少女、水木わるつ
 ……(中略)……
 第九十章 スプロールのど真ん中で

第よん部「質屋のオヤジ篇」
 
第九十一章 でもって、ここでようやく比良野市の“都心部”の変遷が語られる
 ……(中略)……
 第百四十章 でも“過疎の人”シラン・ゴロウのオヤジは、典型的な“日本のお父さん”だった
 
第ご部「テツオのふんどし篇」
 
第百四十一章 それから
 ……(中略)……
 第百八十七章 いちについて──

第ろく部「よーいドン!篇」

 第百八十八章 どれにしようかな
 ……(中略)……
 第二百四十章 定免宝石店の“オジさん”

 (以下予定)
 *残された原稿はここで終わっているが、これ以降の第二百四十一章から最終章まで、著者が構想していた目次立てが残されていた。

 第二百四十一章 見たことのない風景
 第二百四十二章 淫欲魔人誕生タム
 第二百四十三章 さァさァ、続き! 続き!
 第二百四十四章 シランの孤独
 第二百四十五章 そりゃもうこうなったら大騒ぎさ
 第二百四十六章 休憩

第なな部「JR比良野駅前篇」
 
第二百四十七章 人工島同好会、テレビ局へ行く
 ……(中略)……
 第二百六十七章 「ふーん、だったら私も仲間に入ろうかな」

第はち部「討入前夜篇」
 
第二百六十八章 凱旋門のオダワラ提灯
 ……(中略)……
 第二百八十一章 スリサゲパークのおじさんは

第きゅう部「討入篇」
 
第二百八十二章 時は元禄十四年……
 ……(中略)……
 第三百十四章 

第じゅー部「不死鳥篇」

 第五千八百七十一章 そしてその後
 第五千八百七十二章 一九九五年四月、彼等は笑った
 エピローグ 萩原郭醒水は新体詩集『我ハ泣カズヤ』でこう歌った

 『人工島戦記』人名地名その他ウソ八百辞典

巻末付録&別冊付録

巻末付録「人名地名その他ウソ八百辞典」

創作の秘密を明かす500枚を超える「人名地名その他ウソ八百辞典」を巻末に収録。総980項目の中から一部を紹介します。

磐井生一(イワイ・キイチ)
21歳。呼称は「キイチ」、テツオの親友。千州大学教養学部2年経済学部専攻(1浪)。大山県立鍋崎高校出身。比良野エイリアン。あだ名は、元「イッポン」、現在「キーポン」。人工島同好会創立メンバーの一人。ちょっと伸びかけた坊主頭にヘビメタロゴ入りのTシャツを着ていたが、現在はスポーツ嗜好が強くなって、F1やNBAのトレーナーを着て、ロサンジェルス・ドジャースの帽子をかぶっている。“山の中の都会人”で、お祖父さんは元キコリだが、お父さんは温泉民宿「イロリのある民宿いわい」をやっている。大学近くの茅塚にあるアパート「第二平和コーポ」に住んでいる、かなり変わったマトモなやつ。

駒止鉄生(コマドメ・テツオ)
20歳。呼称は「テツオ」。本篇の主人公。千州大学教養学部2年経済学部専攻(現役入学)。比良野エイリアン。両親が転勤で千州に来る前までは埼玉県の某市で高校生をやっていた。人工島同好会の創立メンバーの一人で“リーダー”。市民運動をやっているお母さんに「意識の低いバカ息子」と思われて、ズーッと複雑な思いを抱えていたが、不思議な親友イワイ・キイチと出会って、人工島同好会というおとぼけ思想集団を作ることになってしまう。家は藪内区の梅流にあるお父さんの社宅。ムナバシリ・マリコにスケベ心を抱いていたが、思想上の理由で訣別し、カワイ・モクレンを「ちょっといいかな……」と思って、ひそかにナカウチと争っていたのだが、こちらもタムグラ・ヒロシにさらわれてしまう。

作者(サクシャ)
かなり複雑な背景を持っているらしい謎の人物。時々本篇の中に登場して、ワケの分からないことを言っては消えて行く。『人工島戦記』を片手では持ち上げられないような厚さの本にしてしまった張本人である。

志附子湾(しぶしわん)
比良野市の前に広がる海。昭和30年代の初めから、比良野のオヤジ達はここを半分ぐらい埋め立ててしまおうと考えていた。『志附子湾大規模埋立計画』は昭和32年のもの。国の特定重要港湾に指定されているが、水深が浅く、国際貿易港としては二流なので、現在その底を一生懸命掘り下げて、その搔き出した泥を使って摺下沖に人工島を建設しようとしている。

人工島(じんこうじま)
比良野市の志附子湾を4分の1も埋め立てて建設される予定の海上造成地。東京都の新宿区の半分ぐらいの大きさのある島。港でもあり学園都市でもあり、バイパス道路でもあり、宅地でもあり工業用地でもあるということになっている。「じんこうしま」とも「じんこうとう」と呼ぶ人もいるが、好き好きである。

千州(せんしゅう)
日本のどこかにある。平野・長島・大山・森崎・岩本・猪熊の6県から成る。

比良野(ひらの)
明治維新の時に出来た比良野市の核となった平野藩の城下町。古くは「平良の国」と呼ばれ、「平野」「比良野」とも書く。

別冊付録「人工島戦記地図」

本作品の舞台である架空の街、比良野市及びその周辺について著者自身が描いた「人工島戦記地図」が中綴じの別冊で付きます。

資料提供:神奈川近代文学館


推薦のことば:糸井重里、内田樹、中野翠、町田康

橋本治は、「死んでも平気」だった。
まねしたくはないけど、ちょっとあこがれる。
──糸井重里さん

橋本治さんの書くものの多くは『説明』です。それも『自分に対する説明』。だから、絶対に手を抜かない(自分を説得するときに手を抜く人はいません)。『人工島戦記』がこれだけ長くなってしまったのは、すべての細部について自分でも得心がゆくまで徹底的に説明しようとしたからだと思います。
──内田樹さん

初めて橋本さんと会ったのは、もはや半世紀近く前。部屋いっぱいに広がったジグソーパズルを製作中だった。なんて面倒くさい趣味の持ち主なのだろう!と呆れるやら笑うやら。『人工島戦記』は、そんな橋本さんならではの、緻密にして壮大、青春ロマンにして現代日本史。まさに渾身の遺作!
──中野翠さん

気をつけてください。読み始めるとやめられません。私は深く考えずこの本を読み始めてしまったため、多くの約束を反故にして社会的生命を失いました。人生が終わりました。
──町田康さん


寄稿:矢内裕子、中野翠


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橋本治『人工島戦記──あるいは、ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかのこども百科』
2021年9月24日(金)発売
体裁:A5判上製本函入
頁数:本体1,376ページ/別冊中綴じ32ページ
定価:10,780円(税込)
発行:ホーム社/発売:集英社
ISBN:978-4-8342-5350-4
装幀:川名潤
[電子書籍版は10月配信予定]


著者プロフィール

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撮影=おおくぼひさこ

橋本治(はしもと・おさむ)
1948年東京都生まれ。東京大学文学部国文学科卒業。大学在学中よりイラストレーターとして活躍。77年「桃尻娘」が小説現代新人賞佳作入選。以後、小説、評論、戯曲、古典の現代語訳等幅広く活動する。96年『宗教なんかこわくない!』で新潮学芸賞、2002年『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』で小林秀雄賞、05年『蝶のゆくえ』で柴田錬三郎賞、08年『双調 平家物語』で毎日出版文化賞、18年『草薙の剣』で野間文芸賞受賞。2019年1月29日逝去。享年70。

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