食への気高き偏屈、再び。千早茜のエッセイ集『しつこく わるい食べもの』2月26日(金)発売
この本について
「いいさ、いいさ、いまくらい好きなものを食べるがいいさ」
あなたの欲望を肯定する、ひねくれものからの力強い応援歌!!
『男ともだち』『犬も食わない』の小説家・千早茜さんによる異色食エッセイ『わるい食べもの』(通称「わるたべ」)。新聞や雑誌の書評でも多く取り上げられ、驚愕と共感の声が多数寄せられたこの話題作の続編『しつこく わるい食べもの』が、本サイト連載から書籍となり、2月26日(金)に発売されました。
ハンニバル・レクター博士に憧れ、炊飯器を擁護し、いらぬ助言に噛みつき、よく腹を下す。そんな偏屈でめんどくさい食いしん坊作家の自由な日常にも、ひたひたと押し寄せるコロナ禍のうねり。否応なく侵食され、ゆらぐ日常にとまどい悩みながらも、著者は「書き続ける」ことを選んだ。時間が経つと忘れてしまう、いまこのときの感覚や食の風景を記録するために──。
・闇鍋と同じくらいトンカツ屋が怖い……「闇カツ」
・「持たない暮らし」で炊飯器を捨てる人にもの申す……「台所の妖怪」
・人が一心不乱に食べる姿ってエロすぎる……「パフェが一番エロい。」
・緊急事態宣言下のお取り寄せで一線を越えてしまった……「異世界への黒い扉」
・マスク生活は、 世界が半分になったみたい……「鼻で食う」
など全35話
気鋭の小説家が、いま食と向き合い、見えてきたものとは?
前作に続き、装画は洋菓子「フランセ」や「キャラメルゴーストハウス」のイラストで有名な北澤平祐さんが担当。本文にも挿画17点(モノクロ)を収録しています。
目次
一部連載時の試し読み
ふたたび「わるたべ」/悪党飯/闇カツ/よぼよぼ梅旅/台所の妖怪/セリ科がいい/苦い薬/またまた炊飯器/胃腸の敵/菓子争奪戦/「ただいま食事中。」/金針菜、こわい/すすれない/走馬灯パーティー飯/おいしい呪い/冬と羊/旨み爆弾/やんなった/パフェが一番エロい。/フリーダム・オブ・味噌汁/春の昼飯/移動飯/他人の和えたもの/歯がでる/告白します/またいつか、ジム飯/異世界への黒い扉/肝試し料理/日常と非日常/鼻で食う/愛のこじらせ/プールサイドのハンバーガー/あとかた姫/赤い纏/しつこくつきまとうもの
書評「自由であることへの希求」
あぁ、そうか、千早さんの核にあるのは、「自由」なのだ。前作『わるたべ』の続編である本書を読んで、そのことを思う。
何者からも、何事からも、自由たらんとすること。だからこそ、彼女は、その自由を脅かされそうになったり、もぎ取られそうになったり、自分の求める自由とは違う自由を押し付けられそうになったりすることに、鋭敏であるのだ、と。
そのことが端的にあらわれるのが、たべものに関する場合なのだ。たとえば「おいしい呪い」の章。ここで描かれているのは、味の評価について、「おいしいでしょう」と押しつけられることへの嫌悪、である。味、は自らが評価する自由を担保しておきたい、というごく真っ当な希求でもある。千早さんは、書く。「できるなら『おいしい』以外の言葉で食べものを人に勧めたい」と。そこには、自らが自由を欲するのと同時に、何かを押し付けることで、他者の自由を奪いたくない、他者の自由を尊重したい、という千早さんの姿勢、がある。
新型コロナという未知のウイルスが登場したことによって、変わってしまった日常。その日常に正直に対応するために、「歯がでる」以降の章には日付が入っているのだけど、そういう千早さんの“公平さ”も好もしいし、筆を置こうか迷っていた千早さんに「記録になりますから」と説得した、編集のT嬢もナイス!
食に関するエッセイでありつつ、本書は実は、千早茜という作家の精神のエッセイ、なのである。
──書評家・吉田伸子
テーマ募集の結果発表
書籍化にあたって、書き下ろしで収録するエッセイのテーマ募集を行いました。
刊行記念対談
岡田育さんと千早茜さんによる対談を行ないました。全5回で公開しています。
紹介されました
2021年4月27日「Numero TOKYO WEB」の「2021年のゴールデンウィークに読みたい本」で紹介されました。
2021年6月2日「ほんタメ」の「【全5冊】最近読んでいる本を紹介します」で紹介されました。
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食への気高き偏屈、再び。千早茜のエッセイ集『しつこく わるい食べもの』発売中
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千早茜『しつこく わるい食べもの』
2021年2月26日(金)発売
体裁:四六判変型ハードカバー/192ページ
定価:1,540円(税込)
発行:ホーム社/発売:集英社
ISBN:978-4-8342-5343-6
装画・挿画:北澤平祐
装丁:川名潤
[電子書籍版は3月配信予定]
既刊紹介
『わるい食べもの』
いい食べものは、もうたくさん。毒気冴えわたる食エッセイ「わるたべ」シリーズ第1弾。
著者プロフィール
千早茜(ちはや・あかね)
1979 年北海道生まれ。小学生時代の大半をアフリカで過ごす。立命館大学文 学部卒業。2008 年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。同作で泉鏡花文学賞受賞。13 年『あとかた』で島清恋愛文学賞受賞、直木賞候補。14 年『男ともだち』が直木賞と吉川英治文学新人賞候補。 著書に『西洋菓子店プティ・フール』『犬も食わない』(共著・尾崎世界観)『透明な夜の香り』など。
Twitter:@chihacenti