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賽助×渡辺優【並行宇宙を生きるふたりのぼっち 全5回】 (3)飲み会とパーティーでの「ぼっちあるある」

人気ゲーム実況者であり作家の賽助さんと、作家の渡辺優さん。『今日もぼっちです。』『並行宇宙でしか生きられないわたしたちのたのしい暮らし』刊行記念対談3回目です。
構成=編集部/撮影=山口真由子
▶︎ 対談を1回目から読む

強制的にぼっちだと、つらい

──渡辺さんは、ぼっちという自任はありますか?

渡辺 どうかな。たぶんぼっちなんですけれど、賽助さんのエッセイを読ませてもらって、すごい共感できる部分と、ここは違うなという部分がわりとはっきりあるんです。たとえば私、飲み会は好きなんですね。みんなでわいわいするのは好きなんですけれど、1回飲み会に行ったら、その後4日ぐらいはひとりでいたい

賽助 クールダウンの時間が必要。

渡辺 はい。なので、トータルで言うと、ぼっちのほうが多いみたいな。でも、働いて職場があったときはひとりが好きだと思っていたんですけれど、2、3年前に勤めていたところをやめていざひとりになってみると、ひとりって寂しい。改めて、これが寂しいということか、と、人間の感情を得た。なので、選択してぼっちでいるならいいけど、強制的にぼっちだと、つらいのかな。

──コロナ禍で在宅ワークがひろまったり、大勢の飲み会がしにくくなったりしていますが、オンライン飲み会ってされましたか?

渡辺 1回だけやりました。

──どうでしたか。

渡辺 二度とやらない。

賽助 やっぱりそうなんだ。いや、僕もあれはきな臭いとは思っていた(笑)。

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賽助(さいすけ)
東京都出身、埼玉県さいたま市育ち。大学にて演劇を専攻。ゲーム実況グループ「三人称」のひとり、「鉄塔」名義でも活動中。また、和太鼓パフォーマンスグループ「暁天」に所属し、国内外で演奏活動を行っている。著書に『はるなつふゆと七福神』(第1回本のサナギ賞優秀賞)『君と夏が、鉄塔の上』『今日もぼっちです。』がある。
Twitter:@Tettou_

渡辺 まず、1秒に満たない若干のタイムラグが寂しいのと、常に自分が画面にいるんですね。飲みながら、あっ今、私笑ってるって見える。自意識過剰になっちゃって、この角度で笑うとキモいなとか(笑)。あとは、飲み屋でお酒や料理があって、笑い声があちこちから聞こえるような空気に甘えていたけれど、家でモニターに向かって自分たちの会話しかないと、誰もそんなに面白いことを言っていないと気づいてしまった。私の話もそんなに面白くなかったんだなって。

賽助 悲しい気づきですね、それは。今後も参加しないと思うけど、いい情報だ(笑)。ただ唯一良さそうなのは、大人数の飲み会とかだと、トイレ行ってる間に自分の席がなくなったりするじゃないですか。僕はいつもそうで、つらくて。それがオンライン飲み会だとおそらく発生しないですよね。

パーティーへの憧れと現実

渡辺 でも、そういう初めましての人がいっぱいいるような飲み会に参加できるっていうのが、社会に参加している人っぽい。

賽助 インターネットを介した活動をしていると、いわゆるオフ会みたいなやつがたまにあって。そういう機会ってないですか。

渡辺 ないですね。

──出版社のパーティーはありますよね。渡辺さんが受賞された小説すばる新人賞は、毎年、他の集英社の賞とあわせて帝国ホテルでパーティーが行われますが。

渡辺 正直、得意ではないですね。

賽助 僕もです。僕の小説を出した出版社も毎年、帝国ホテルでパーティーがあるんですけど、なんで他の作家さん同士って仲良いんですかね。何か楽しそうに話してて。僕はずっと端にいて、担当編集の人と話して、帰るだけ。

渡辺 めっちゃ分かります。いつのまに仲良くなっているんでしょうね。

賽助 不思議。

渡辺 本当に不思議。でも、帝国ホテルのご飯は食べたいんです。だから、ご飯だけを食べに行く目的でのパーティーなら好きです。

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渡辺優(わたなべ・ゆう)
1987年宮城県生まれ。宮城学院女子大学卒業。2015年『ラメルノエリキサ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。著書に『自由なサメと人間たちの夢』『アイドル 地下にうごめく星』『悪い姉』『並行宇宙でしか生きられないわたしたちのたのしい暮らし』(12月16日発売)などがある。
Twitter:@watanabe_yu_wat

──パーティー嫌いで絶対行かないというスタンスの作家もいますが、おふたりは苦手だけれども行かれる。そこも共通しているんですね。

渡辺 パーティーっていう響きに憧れが……何か楽しいことがあるに違いないって思ってしまうんですね。

賽助 何かあるかもしれないし、これも経験だと思って毎年行って、毎年失敗したって「雑談」で話してます。

渡辺 よかったです。パーティー楽しんでいないのは自分だけじゃないとわかって。

賽助 会は違いますけど、それぞれの会場にこうして楽しんでいない人がいるから大丈夫(笑)。

小説のなかでも左右を間違える

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──渡辺さんは、『並行宇宙~』のあとがきで「『変だ』と言われた話が、別の友人からは『めっちゃわかる』と共感を得られたり」して驚いたと書いています。お互いに読まれて、共感したり理解不能だったエピソードはありますか?

賽助 左右がわからないという話、僕の兄もそうなんです。それとうちの母が、実家でどこかに新しい何かができたという話をするとき、方向を「あっち」って指すんです。でも別の場所の話でも、「あっち」って同じほうを指す。違う場所なのになんで同じほうを指すんだろうと思ったら、指した方向に家の玄関があるんです。母はたぶんゲームのチュートリアルみたいな、まずここに進んでから次という一歩目を教えてくれていた。みんな玄関から出るから。この「左右」の話を読んだときに思い出して、人の方向感覚の違いが面白かったですね。人それぞれ回路が違うんだなって。

渡辺 私、小説の中でもだいたい方向が外れているみたいで。校正さんに、右手に部屋があるって書いていたけど、これは左では? とか指摘してもらって。

賽助 それはちょっと苦労しますね。密室のミステリーとか難しそう。

渡辺 そうです。何か矛盾が発生して、伏線かと思ったら、普通に間違い。私は地図も苦手で、北と南しかわからない。でもゲームのおかげで若干ましになったかもしれないです。地図の上が北とか、ゲームで覚えて。あるゲームのマップで、こっちにウエストなんとかという町があったんですね。ウエストってこっちにあったから、こっちが西だと。おかげで、生きてこられました。

賽助 やっぱりゲームは偉大ですね。

渡辺 偉大です、本当に。

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▶︎第4回:占いとプロレス、そして猫

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