本作品について
本作品は集英社の「小説すばる」1993年10月号から1994年3月号まで「人工島戦記」として連載された約500枚の原稿に、その後十数年にわたって著者による大幅な加筆、修正が加えられたものです。
2019年1月29日に橋本治さんが逝去されたことで、残念ながら本作は未完となりましたが、ご遺族の了解を戴き刊行の運びとなりました。
尚、「小説すばる」連載時に副題はありませんでしたが、今回「──あるいは、ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかのこども百科」という副題が入っているのは、最も新しい加筆のある原稿の束に「人工島戦記──あるいは、ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかのこども百科」と書かれた扉が付けられていたことによります。
内容紹介
「人工島? そんなのいらないじゃん」
架空の地方都市を舞台に、戦後から平成に到るこの国の普通の人々の意識を描いた未完の大長編。
千州最大の都会である比良野市では、志附子湾を埋め立てて「人工島」を作る計画が着々と進んでいた。それを知った国立千州大学二年生のテツオ(駒止鉄生)とキイチ(磐井生一)は、すでにある市民運動に共感することが出来ず、新しい反対運動を立ち上げる。彼らにとって唯一ピンと来るのは、「人工島? そんなのいらないじゃん」という、そのことだけだったのだ。
大学ではテツオとキイチを中心に同好会が組織され、人工島建設への反対運動が動き始めるが、話はやがて彼らの父母、祖父母、兄弟、近所の人々の人生にまで脱線し、街全体の歴史とそこで生きる人々の姿が浮かび上がっていく。
本書目次
巻末付録&別冊付録
巻末付録「人名地名その他ウソ八百辞典」
創作の秘密を明かす500枚を超える「人名地名その他ウソ八百辞典」を巻末に収録。総980項目の中から一部を紹介します。
別冊付録「人工島戦記地図」
本作品の舞台である架空の街、比良野市及びその周辺について著者自身が描いた「人工島戦記地図」が中綴じの別冊で付きます。
推薦のことば:糸井重里、内田樹、中野翠、町田康
橋本治は、「死んでも平気」だった。
まねしたくはないけど、ちょっとあこがれる。
──糸井重里さん
橋本治さんの書くものの多くは『説明』です。それも『自分に対する説明』。だから、絶対に手を抜かない(自分を説得するときに手を抜く人はいません)。『人工島戦記』がこれだけ長くなってしまったのは、すべての細部について自分でも得心がゆくまで徹底的に説明しようとしたからだと思います。
──内田樹さん
初めて橋本さんと会ったのは、もはや半世紀近く前。部屋いっぱいに広がったジグソーパズルを製作中だった。なんて面倒くさい趣味の持ち主なのだろう!と呆れるやら笑うやら。『人工島戦記』は、そんな橋本さんならではの、緻密にして壮大、青春ロマンにして現代日本史。まさに渾身の遺作!
──中野翠さん
気をつけてください。読み始めるとやめられません。私は深く考えずこの本を読み始めてしまったため、多くの約束を反故にして社会的生命を失いました。人生が終わりました。
──町田康さん
寄稿:矢内裕子、中野翠
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橋本治『人工島戦記──あるいは、ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかのこども百科』
2021年9月24日(金)発売
体裁:A5判上製本函入
頁数:本体1,376ページ/別冊中綴じ32ページ
定価:10,780円(税込)
発行:ホーム社/発売:集英社
ISBN:978-4-8342-5350-4
装幀:川名潤
[電子書籍版は10月配信予定]
著者プロフィール
橋本治(はしもと・おさむ)
1948年東京都生まれ。東京大学文学部国文学科卒業。大学在学中よりイラストレーターとして活躍。77年「桃尻娘」が小説現代新人賞佳作入選。以後、小説、評論、戯曲、古典の現代語訳等幅広く活動する。96年『宗教なんかこわくない!』で新潮学芸賞、2002年『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』で小林秀雄賞、05年『蝶のゆくえ』で柴田錬三郎賞、08年『双調 平家物語』で毎日出版文化賞、18年『草薙の剣』で野間文芸賞受賞。2019年1月29日逝去。享年70。