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『こりずに わるい食べもの』オンライン・ギャラリー 北澤平祐さんの挿絵全点フルカラーで特別公開

千早茜さんの大人気エッセイ「わるい食べもの」シリーズの第3弾『こりずに わるい食べもの』が発売されました。装画と挿絵を手がけたのは、書籍装画から洋菓子「フランセ」、ファミリーレストラン「ココス」のイラストまで幅広く活躍中の北澤平祐さん。刊行を記念して、単行本収録の挿絵全点をフルカラーで特別公開します!

連載中や描き下ろしイラストの完成時にやりとりされた、千早・北澤両氏のコメントとともにお楽しみください。

北澤さんと千早さん
はじまるよ

東の食の海原へ

試し読み

北澤 江戸時代のように旅笠をかぶって移動するけものちゃんをメインに、左に京都タワー、右に東京タワーを。背負っている風呂敷には原稿に登場する京都の好物。ドレスは、「福よせ」のおせんべい柄にしました。

千早 相変わらずお洒落なけものちゃんですが、ちょっと渋く、『東海道中膝栗毛』のよう。京の美味を背負って東の都へ。「福よせ」柄のワンピース、欲しいです。

もくじ

北澤 最初は「わるたべIII(3)」をテーマに、スカイツリー、どじょう、パフェを並べました。けものちゃんには、人形焼柄のシャツと小さな帽子を。なんとなくこの空白の多さ(クリーンさ)も東京っぽいかなと。

千早 連載のメインビジュアルですね。パフェの横にどじょうってすごい絵面ですが、とても「わるたべ」っぽいです。けものちゃん、淑女っぽいのに、平然と人形焼き柄のブラウスを着ていて笑いました。イヤリングはお団子でしょうか。

先祖返り

北澤 果物人間とゴリラが肩を組んでいるツーショットです。背景は、ちょっとジャングルっぽい雰囲気に。

千早 ダイナミックな構図で、すごいパワフル! ゴリラがとても強そう。北澤さんは「わるたべ」のときは戦闘力をあげてきている気がします。

焼いてから

北澤 アスパラ界のプロレスをモチーフに、炎に包まれた焼きアスパラがチャンピオンとして君臨し、両脇に倒された茹でアスパラとホワイトアスパラ。これだけ暑いと、なぜかもっと暑苦しい絵が描きたくなるのが不思議です。

千早 エッセイはめずらしくゆるめに締めたのに、ガチンコファイトを仕掛けてこられて、負けないぞと気持ちを新たにしました。ゴリラに続き、「わるたべ」北澤がどんどん暑苦しくなってきています。元気がでますね。

パーフェクトワールド

北澤 これまでで一番アップのけものちゃんです。目のなかのパフェと、1対1の完璧な世界を描きました。ふさふさの毛を描くのが楽しかったです。

千早 おお、アップ! 毛並みの描き込みが細やかです。けものちゃんって狼のはずなのでイヌ科だろうに、どことなく猫っぽいですよね。野生の猫感があります。孤高だからかな。

海老の頭

北澤 この回はちょっと小説っぽい雰囲気もあり、いつもとはまた違った形で新鮮な話でした。絵は、けものちゃんの毛並みをもつ猫が、海老の頭をうれしそうに食べているところ。周りには長靴が少し見切れています。

千早 猫っぽいと思っていたら、けものちゃんが猫化するという、複雑な状況になりました。『胃が合うふたり』ではるな檸檬さんが描いた猫千早も、やっぱりこんな白い長毛種でしたね……なぜなのか。

ブラックランチボックス

試し読み

北澤 闇の中に静かにたたずむ、美しい柄のお弁当箱のラフを提出したら、千早さんから「未知の植物にしたら楽しそう」というおもしろそうな案をいただきました。見たことのない感じの植物、描いてよかったです。

千早 めずらしくラフを見て提案した回でした。胞子らしきものが飛び、けものちゃん擬態植物もいますね。闇の中の恐ろしい小宇宙……私の暗黒歴史が美しい絵になったことで、行方知らずの弁当箱も成仏した気がします。

包んで包んで兵馬俑へいばよう

北澤 餃子の頭をした兵馬俑たちです。色は、餃子の具をイメージして着彩しました。お腹が空いた群衆に、頭だけ奪われないと良いのですが……。

千早 餃子兵馬俑、なかなかの圧。一見、パターン化された柄のように見え、また整然と包みたくなりました。本物の兵馬俑は、作られた当時は色鮮やかだったそうなので、こういうのもあったかもしれません。餃子好きの皇帝に捧げられる。

食べものの重み

北澤 半分になったパティスリーのショーケースを運ぶけものちゃん。ショーケースのお店は、実は千早さんのtwitterを追いかけて、紙袋のロゴから突き止めました(笑)。

千早 自分で書いた内容を忘れ、エレガントなケーキ泥棒かと思ってしまいました。パティスリーの店名は書いていなかったはずなのに、仕上がった絵に私の大好きな定番ケーキが描かれていてびびりました。北澤さんのリサーチ力よ。

恋と「サッポロ一番」

北澤 ハートの形の器に入った「サッポロ一番」です。箸置きやテーブルクロスなどもハート型に。12月24日前後に描いたからか、少しだけクリスマスカラーになりました。

千早 わあ、すごいハートだ。箸置きもハート(しかも、ふたり分)、背景もハート。ハートは照れくさいモチーフで、実生活ではまず手に取りませんが、「わるたべ」ならいいと思える不思議。

香箱蟹こうばこがにとそぼろカレー

北澤 香箱蟹から、蟹の宝石箱を描きました。下のほうに、抜けてしまって落ち込んでいる「歯くん」がいます。

千早 ちゃんと歯がいる! こうくるとは思いませんでした。めでたい感じでいいですね。本文よりトレジャー感があります。恋人の歯はちゃんと戻りました。

夢の食事

北澤 いつもよりはストレートに、食べられない鰻丼やりんごケーキ、ラーメンを描きました。

千早 鰻が夢のあわいに溶けていく……。けものちゃんは顔はワイルドですが手はいつも優雅。この回は手だけの登場なので悲しみが伝わってきますね。相変わらず、夢では食べられないままです。

中華街の粉仕事

試し読み

北澤 原稿から「粉ものは自由」ということで、餃子や、しゅうまい、そして衝撃的な形状の肉まんなど、自由に変形している粉ものを描きました。

千早 ふわふわもちもちした小麦粉の生きものたち。北澤さんのシノワズリ、大変に可愛いです。背景の柄も好きです。この絵でチャイナスイッチが入り、単行本の表紙に繋がっていったのでしょうか。

山形編【前編】【後編】

北澤 山形県の形が食事している人の顔に見えたので、向かい合うけものちゃんが、作中で千早さんが食べていたものをお箸でつっつく絵に。今後違う県の話が出てくるたびに、県の形を何かに見立てるのも楽しいかも?

千早 これは……ジュゼッペ・アルチンボルドの「寄せ絵」だ! 山形の美味がみちみちとよみがえりますね。食べられなかったサクランボがけものちゃんを彩っています。

雨と神様の物語

北澤 雨の日の静けさを描きたいと思い、めずらしくあまりはしゃがずに(!)静物画のような絵に。いつもとは違う雰囲気の絵をお見せする時はいつも緊張します。影に黒を入れたら、「わるたべ」感が出ました。

千早 ほんとうに、めずらしく静かな絵! でも、北澤さんが描くと、静謐さの中にもモダンさやお洒落さがでますね。黒の使い方と、黄と青のせいでしょうか。

腹以外を満たす食

北澤 胃の形をしたお皿の中に、むいたザクロを。HBでの連載最終回ということで、少し華やかにしようと背景に柄を入れてみたら、なぜか「わるい」感が増してしまいました。でも「わるたべ」だから、これで合っているはず。

千早 胃皿がつややかなピンクなのに笑いました。生々しい。臓器が登場するのは、もはや「わるたべ」の定番になりつつありますね。今回の連載はピンクの絵が多かった印象があります。北澤さんの絵は可愛いだけじゃないピンクになるので好きです。

輝く朝ごはん

北澤 朝ごはんの風景です。最初は食べものも輝いているようなカクカクしたタッチにしようと思いましたが、編集担当のTさんから「食べものは美味しそうなこれまでのタッチがいい」と提案があり、背景をプリズムっぽい感じに。

千早 とても、きれい。朝の澄んだ空気が結晶化していて、でも玉子焼きの黄色は優しく美味しそうで、いままでにない感じの絵でした。プリズムという言葉の響きが好きですが、絵でなくては表現できない気がします。

装画

北澤 今回、中華料理モチーフの装画にするというアイデアは、実はかなり前、「わるたべ」第1弾発売時のトークショーの時に出たものだったと記憶しています。「わるたべ」が今後もずっと続いていくといいなという話題の際に、第1弾が洋食モチーフだったので、第2弾がでるのならば和食、第3弾が出るのなら中華にしましょうかと適当(すみません)にお話していたことがなんと、ここまで全部実現してしまいました。たしかその時、その後は変化球で宇宙食?とか言った気がするので、もしかすると「わるたべ4」は壮大なスペースオペラ的装画になるかもしれません。

千早 ピンク、黄、ときたので次は寒色かと思ったら、まさかの赤! チャイナっぽい赤で、おめでたさもあり、「わるたべ」らしくもありますね。
北澤さんの中で「ストローつき肉まん」が強烈だったことが伝わってきます。食べ散らかされた裏で、けものちゃんが巨大肉まんに座っていたことがわかりますね。
髪飾りは私のリクエストで月餅にしてもらいました。茶器がとてもかわいい。北澤イラストの中国茶器を作ってほしいです。


カラフルな挿絵に、北澤さんと千早さんのコメント、お楽しみいただけたでしょうか。次作「壮大なスペースオペラ的わるたべ」は、果たして実現するのか……!? 今後もどうぞ「わるたべ」シリーズをご愛顧くださいませ。

またきてね

LINEスタンプのご案内

「わるい食べもの」シリーズのLINEスタンプができました。小説家とイラストレーターがコラボレーションしたクセになる味わい。どのような場面で使うかはあなた次第!

プロフィール

千早茜(ちはや・あかね)
1979年北海道生まれ。小学生時代の大半をアフリカで過ごす。立命館大学文学部卒業。2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。同作で09年に泉鏡花文学賞、13年『あとかた』で島清恋愛文学賞、21年『透明な夜の香り』で渡辺淳一文学賞を受賞。小説に『男ともだち』『犬も食わない』(共著・尾崎世界観)『ひきなみ』『しろがねの葉』など。エッセイ集に『わるい食べもの』『しつこく わるい食べもの』『胃が合うふたり』(共著・新井見枝香)がある。

北澤平祐(きたざわ・へいすけ)
イラストレーター。東京都在住。カリフォルニア州立大学フラトン校にてBFA、同大学院にてMA取得。アメリカに16年暮らした後、イラストレーターとして活動を開始。書籍装画、広告、CDジャケット、商品パッケージなど国内外の幅広い分野でイラストを手がける。著書に『キャラメルゴーストハウス』(共著・かさいたつや)、『こはるとちはる』(文・白石一文)、『ぼくとねこのすれちがい日記』『ゆらゆら』『ルッコラのちいさなさがしものやさん』等。

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