「国境なき医師団」小児科医がつぶさに描く、人類とエボラの死闘。加藤寛幸『生命の旅、シエラレオネ』2月24日(金)発売
この本について
エボラウイルス病の過酷な治療現場で、こどもたちの治療にあたった「国境なき医師団」の小児科医による渾身のノンフィクション。第20回開高健ノンフィクション賞最終候補作。
二○一四年十一月、西アフリカのシエラレオネ共和国。致死率の高さから「殺人ウイルス」と恐れられるエボラウイルス病の治療センターに、「国境なき医師団」の小児科医として著者は派遣される。あっという間に生命が奪われていく壮絶な現場で出会ったのは、家族をなくしながらも必死に耐えて明るさを失わず、他のこどもの世話を買って出るこどもたちだった。
前任地の南スーダンでの活動によるPTSDに苦しみ、生きる意味を見出せなくなっていた著者は、彼らによって次第に再生へと導かれて行く――。
生命とは何か、利他とは何かを問う感動のノンフィクション!
僕はショックと後悔で言葉を失った。ここでは、「またあとで」や「また明日」は許されないのだ。エボラは決して待たず、あっという間に患者の命を奪っていく。(中略)患者さんたちにも、僕たちスタッフにも無駄にできる時間などない。1秒1秒が勝負なのだ。(本文より)
さだまさしさん推薦のことば
壮絶な「命の現場」を読む、未体験の感動。そして私たちの未来を切実に想い、願う。
――さだまさしさん
開高健ノンフィクション賞選評より
姜尚中さん
何よりも新鮮なのは、エボラ治療センターで繰り広げられる生と死の鬩ぎ合いの生々しい臨場感、そしてそこに示される健気な子供たちの生命の輝きの描写である。
田中優子さん
「国境なき医師団」の医師たちがどのような活動をしているのか、極めて具体的に知ることができる貴重な記録である。
藤沢周さん
コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻等、様々な人命危機の時代において「利他」の精神の重要性を提示し、人であることの一筋の光明をも覗かせてくれたルポでもある。自国第一主義、利益、利己にまみれた社会や時代の現実から目を背かせる詐術として政治があることをも浮かび上がらせた佳作。
(以上、季刊誌「kotoba」2022年秋号より)
紹介されました
2023年3月11日 静岡新聞に著者インタビュー「強く生きる姿伝えたい 国境なき医師団元会長 静岡の加藤さん エボラ医療活動 一冊に」
2023年6月4日 現代ビジネスに著者インタビュー 「国境なき医師団」の日本人小児科医が、西アフリカでエボラとの死闘を繰り広げたら辿り着いた「おどろきの境地」
2023年8月1日 清流9月号に著者インタビュー「遠い国のことは『知らない』ではなく世界の不公平や困難を自分事として」
目次
第1章
1入国 2夜明け 3喘ぎ 4感触 5シエラレオネ
第2章
1脱走 2エボラ 3ルーティーン 4爆弾 5トリアージ 6アウトブレイク 7ビール・タバコ・コーヒー 8視界 9こどもたち
第3章
1志望動機 2proximity 3点滴 4イサトゥ 5絶望 6哀しみ 7警告 8生命 9急変 10ソリ− 11仲間 12ナイロビ・フライ 13こども・家族 14サオ・ムサ
第4章
1こどもたち 2 2ソリ−ッ! 3ハナタレハッサン 4痙攣 5一二五〇グラム 6扇風機 7退院 8摩擦 9通達 10強制帰国 11アドバイス
第5章
1デブリーフィング 2トレーニング 3アンネ 4命の選択 5砂漠に水を撒く 6終わりと始まり 7ヤブ医者
おわりに
イベントリポート
2023年7月30日(日)ジュンク堂書店池袋本店にて、作家・いとうせいこうさん×著者・加藤寛幸さんによるトークイベント 「紛争とパンデミックの時代に」を開催しました。
このイベントのリポートを集英社オンラインで公開中。
書誌情報
加藤寛幸『生命の旅、シエラレオネ』
2023年2月24日(金)発売
定価:1,980 円(10%税込)
体裁::四六判ソフト/本文 288ページ+カラー口絵4P
ISBN:978-4-8342-5371-9
電子書籍:2023年3月30日配信開始予定
著者プロフィール
加藤寛幸(かとう ・ひろゆき)
小児科医。人道援助活動家。1965年、東京都生まれ。北海道大学中退、島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。シドニー・ウエストメッドこども病院、静岡県立こども病院などで小児救急、小児集中治療に従事。タイ・マヒドン大学にて熱帯医学ディプロマ取得。2003年より国境なき医師団の活動に参加し、アフリカやアジアの他、国内の災害支援にも従事。2015年〜2020年、国境なき医師団日本会長。2022年、ウクライナでの活動に参加。