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百冊の孤独(参考文献が多すぎる問題について)  ナカムラクニオ

ゼロから1冊の本が生まれるまでのプロセスを、著者のナカムラさんが実験的に日記で公開していきます。#4
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ナカムラクニオ


 分け入っても分け入っても本の山。

 だいたい、本を書きはじめるといつの間にか参考資料の山で、生活が埋め尽くされてしまう。むしろ、本の隙間で暮らしているような感じだ。

 1冊の書籍を作るときに読む本の数は、数百冊にもなる。例えば、20人の画家について書くとしたら、1人につき10冊以上の関連本は参考にするので、合計200冊以上になる。図書館で部分的にコピーしても、半分程度は買うことになるので、結局は100冊程度が我が家の空間を圧迫することになるのだ。

 そして、積まれた本たちが目の前に巨大な富士山のように立ちはだかる。しかし、本は過去を旅するためのタイムマシーン。記憶を未来へ受け継いでゆくための尊い装置だ。僕たちは、そういった幾重にも積み重ねられた「時間を読む」ために本を買っている。本を書くのもまた同じような行為だ。時間をかけて、受け継がれていくようなものを作りたい。そんな風に考えながら毎回執筆を進めている。だから、本はできるだけ買って手元に置いておきたいとも思っている。

 問題なのは、書けない時ほど、なぜか資料をたくさん買ってしまうことだ。結局、本だけが増えていく……。

 そんな風にして、今回もなんとか原稿の一部とイラストは完成した。編集のTさんと校正者さんがチェックできるように、本を段ボールに詰めて発送する。

 無事に終わって欲しい。毎回、祈るような気持ちで宅配便屋さんに託す。そして、本を送ってしまうと、ぽっかり100冊分のスペースが空く。なんだか寂しい気持ちにもなる。このなんとも言えないうれしい「百冊の孤独」こそが、執筆の醍醐味だとも言えるかもしれない。

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【「こじらせ恋愛美術館」の本づくり日記】
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