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Cat Books/猫本

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猫の本、猫が出てくる作品、猫にまつわる話、をまとめています。
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#エッセイ

本と猫を愛する会社員のリアルな書店開業記|井上理津子/協力 安村正也 『夢の猫本屋ができるまで Cat’s Meow Books』(1)

ホーム社の既刊から、いま読んでいただきたい本をセレクトして紹介する「ホーム社の本棚から」。7月からは井上理津子/協力  安村正也『夢の猫本屋ができるまで Cat’s Meow Books』(2018年)を全5回でお送りします。 この夏開店4周年を迎える、三軒茶屋の「Cat’s Meow Books」は、会社員でもある安村正也さんが開いた猫本専門書店。本好きといっても関連業界の経験はなかった安村さんが、50歳を前になぜ書店を始めることになったのか。本書は、書店に精通しているノ

第2回 コモドドラゴン? やまもとりえ「夜のねこでよければ」

ここは、いつも優しいねこママと、クールなバーテンダー林クンが迎えてくれる、九州のとあるバー。今夜も楽しく興味深い(?)よもやま話が繰り広げられます。 [毎月第2・4金曜日更新 はじめから読む] <前の話へ  連載TOPへ  次の話へ> 連載【夜のねこでよければ】 毎月第2・4金曜日更新 COMIC OGYAAA!! でも連載中 やまもとりえ 天パの長男、親方風な次男、なで肩の旦那さん+トンちゃん(猫)と暮らす、イラストレーター兼マンガ家。著書に『Aさんの場合。』『お母さ

第1回 合格です やまもとりえ「夜のねこでよければ」

ここは、いつも優しいねこママと、クールなバーテンダー林クンが迎えてくれる、九州のとあるバー。今夜も楽しく興味深い(?)よもやま話が繰り広げられます。 [毎月第2・4金曜日更新 はじめから読む]        連載TOPへ  次の話へ> 連載【夜のねこでよければ】 毎月第2・4金曜日更新 COMIC OGYAAA!! でも連載中 やまもとりえ 天パの長男、親方風な次男、なで肩の旦那さん+トンちゃん(猫)と暮らす、イラストレーター兼マンガ家。著書に『Aさんの場合。』『お母さ

100年に一度のグランド猫の日記念  「ホーム社猫祭」 第1部

皆さん、毎年2月22日が「猫の日」と呼ばれているのはご存知でしょうか? そして今年の猫の日は、2022年2月22日。 なんと2が6つも並ぶ、100年に一度のグランド猫の日なのです。 ホーム社ではそんな特別な猫の日をお祝いすべく、会社を挙げて『100年に一度のグランド猫の日記念 ホーム社猫祭』を行うことになりました。 ここから先はそんなホーム社猫祭だけの特別な企画が目白押し。 猫好きのあなたも、たまたま覗いてくださったあなたも、ぜひ最後までご覧いただけたら嬉しい限りです。

村山由佳 もみじの言いぶん 第4話「爪をととのえる」

 かーちゃんが小学校に上がった頃やから、おおかた半世紀も前の話やけどな。  新しく買(こ)うてもろた赤いランドセルが嬉しゅうて嬉しゅうて、後生大事に枕もとに置いて寝たんやて。  朝起きたら、どないなってた思う? 当時、家におった〈チコ〉いう名前の猫が、夜中に乗って爪とぎしよって、ふたが一面おろし金みたいにバリバリの傷だらけやがな。  一年生のかーちゃんはめっちゃ悲しかったけど、ここで泣いたらチコがかーちゃんのかーちゃんに怒られる、思(おも)て我慢して、そのランドセルで六年間通

村山由佳 もみじの言いぶん 第3話「花は咲く」

 若い時分はうち、ほんまによう遠出しとった。  放浪癖っちゅうのかいな。家から一歩出たとたんに、散歩やら旅やら区別つかんようになりさらして、時間も日にちも忘れてほっつき歩いてまうねん。  今考えたら、かーちゃんめっちゃ心配しとったやろなと思うけど、反対にうちのほうが待たされることかてぎょうさんあったから、おあいこやん、なあ?  年とってからはもう、外へは全然出ぇへんようになってしもたし、たまに抱っこしてもろて外の世界を眺めるのんは、なかなか愉(たの)しかったで。  今年もそろ

村山由佳 もみじの言いぶん 第2話「ずっと一緒」

 うちのかーちゃんな。言うたら何やけど、アカンタレやねん。うちがそばにおらんようなってすぐの頃なんか、べそべそ、じめじめ、ほんま鬱陶(うっとう)しかってん。  皆さん、知っとる? あのボトル型のネックレス。中に、〈これってもしかして天使の骨やないん?〉いうくらい神々(こうごう)しいうちの骨を納めたあのネックレス。  ガラスやし、あの女のこっちゃからカクジツに落として割るやろ? ふだん家におる間は、危なかしゅうて身に着けられへん。  せやけど、な、これやったら心配要らんのんちゃ

村山由佳 もみじの言いぶん 第1話「安眠妨害」

 どちらさんも、ご機嫌さん。もみじですー。しばらく留守しとってかんにんやで。  ここな、最近のうちの居場所。  かーちゃんととーちゃんが毎日、前を通るたんびに、 「もみちゃん、おはよ」 「今日も可愛(かい)らしねえ」 「行ってくるわな。すぐ帰るから待っときや」 「おやすみ、もみじ。夢に出てきてな」  て、しょっちゅう話しかけてくるから、ぜんぜん淋しないねん。ちゅうか、むしろ安眠妨害やっちゅうねん。正味の話。  あとな、二人とも気づいてないみたいやけど……  ベッドの上、こっか

村山由佳 猫がいなけりゃ息もできない 第10話「今この瞬間こそが、人生でいちばん若い」

 ともあれ、猫の話だ。  作家生活10年目にかなりの無理をして手に入れ、自力で開拓して緑の楽園にした広大な農地と、全身全霊を傾けて造りあげた家、そして農場に不可欠の動物たちを、旦那さん1号のもとに残して房総鴨川を後にする時──私は、前にも書いたとおり、小柄な三毛猫を1匹連れていた。  それが、今も我が家にいる最長老17歳の〈もみじ〉さんである。  なんとなく敬称付きで呼んでしまうことが多いのは、人間に換算したら85歳くらいの大先輩だからなのだが、連れて出た当時はまさか、ここ

村山由佳 猫がいなけりゃ息もできない 第9話「催眠誘導」

 子どもの頃から私は、自分の態度や言葉によって誰かの気分を害してしまうことがこの世の何より苦手だった。原因がたとえ自分でなくても、相手が怒っているという状況、それだけでいたたまれなかった。  だから、目の前に不機嫌な人がいると、悪いことなんか何もしていなくても謝ってしまう。何とかして機嫌を直して欲しいと思うあまり、慌てて先回りしては下手に出てしまうのだ。  夫婦の間でもそうだった。  別々の人間がひとつ屋根の下で暮らしていれば、こまごまとした対立が起こらないほうがおかしいのに

村山由佳 猫がいなけりゃ息もできない 第8話「たとえば一緒に暮らすひとが、筋金入りのミミズ好きだったら」

 誰にだって苦手なものはある。私にだってある。  ミミズだ。蛇だったら素手でつかめるし、ゴキブリだろうがクモだろうがへっちゃらだけれど、ミミズだけは5センチを超えるともう駄目である。こうして文字にするだけでも鳥肌が立つし、庭いじりをしていていきなり遭遇すると、ぐえっと変な声をあげると同時に数メートルは飛びすさってしまうくらい無理である。  たとえばの話、一緒に暮らすひとが筋金入りのミミズ好きだったとして(いやだあー)、ミミズの魅力や手触りの素敵さをどんなに滔々と語られたとして

村山由佳 猫がいなけりゃ息もできない 第7話「世の中には、猫がいると息もできない人間だっている」

 けれども旦那さん1号は、私が外でどこかの猫を触ることも嫌がるのだった。  どこかの店の駐車場だったと思う。人なつこい子猫が足もとにすり寄ってきたので、嬉しさ全開で背中を撫でていたら、 「咬まれたらどうするんだよ!」  目をつり上げて彼は言った。 「どこで何してきたかわからない猫なんか、体じゅうバイ菌だらけだぞ」  大丈夫だよう、と私は笑ってみせた。  よっぽど猫の嫌がるようなことをしない限り、いきなり咬まれたり引っかかれたりというのは考えにくい。そもそも私など、小さい頃から

村山由佳 猫がいなけりゃ息もできない 第6話「禁断症状」

 ともあれ、そんなふうにして常に猫と一緒に育ってきた私だから、旦那さん1号(こう呼ぶのも失礼とは思うのだけれど、後に2号も登場することになるのでスミマセン)から、猫との生活を、「俺といる限り、あきらめな」と言われた時は耳を疑ったし、どうして自分がそんな理不尽な仕打ちに耐えなくてはならないのか、まったくもって納得できなかった。  住んでいるところがたまたまペット不可の物件であるとか、そういう理由ならまだわかる。がむしゃらにお金を貯めて、生きものを飼えるところに引っ越せばいいだけ

村山由佳 猫がいなけりゃ息もできない 第5話「生まれて初めて見送る命」

 何しろ、ものごころつく頃には、家に猫がいた。  私にとって最初の1匹は、チーコという名前の茶色のトラ猫だ。  毛色まで覚えているのは写真が残っているからで、当時住んでいた家の大家の息子さんが大学の課題か何かで撮って現像し、パネルに引き伸ばしてくれたのだった。3歳の私と、まだ幼さの残るチーコの写真。今でも私の部屋に飾ってある。  猫は、死期をさとると自分から姿を消すという。それでかどうかはわからないけれど、チーコも、ある日を境にいなくなってしまった。  そのあと、私が5歳の時