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Cat Books/猫本

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猫の本、猫が出てくる作品、猫にまつわる話、をまとめています。
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#もみじの言いぶん

本と猫を愛する会社員のリアルな書店開業記|井上理津子/協力 安村正也 『夢の猫本屋ができるまで Cat’s Meow Books』(1)

ホーム社の既刊から、いま読んでいただきたい本をセレクトして紹介する「ホーム社の本棚から」。7月からは井上理津子/協力 安村正也『夢の猫本屋ができるまで Cat’s Meow Books』(2018年)を全5回でお送りします。 この夏開店4周年を迎える、三軒茶屋の「Cat’s Meow Books」は、会社員でもある安村正也さんが開いた猫本専門書店。本好きといっても関連業界の経験はなかった安村さんが、50歳を前になぜ書店を始めることになったのか。本書は、書店に精通しているノ

うち、ここにおるやん。村山由佳さんのフォトエッセイ『もみじの言いぶん』発売中

この本について 17歳で今生を旅立ったあの子が見てきた世界とは。 作家・村山由佳さんの盟友で、たくさんのフォロワーから愛された三毛猫・もみじ。2018年3月、もみじは17歳で今生を旅立ちました。彼女の軽妙洒脱な関西弁のつぶやきが、時にユーモラスに、時に厳しく、時に切なく……私たちの心に沁みこんできます。大切な存在を失った「その後」をどう生きるか――そのヒントがここに。オールカラーのフォトエッセイ。 連載最終回にTwitterでお寄せいただいた声・勇気を持って一歩踏み出せそ

村山由佳 もみじの言いぶん 第5話「わからせる」

 腹立った時はな。無理に我慢したらあかん。  遠慮して、言いたいこと飲みこんで、おなかに溜めといたところで、あとから大爆発すんねやったらおんなじこっちゃろ? それやったら、ふだんから小爆発でガス抜きしといたほうがなんぼかマシや。  大事なことはな、「今うちは怒ってんねんで!」いう事実と、「こっから先は絶対譲ったげへんで!」いう境界線を、いやっちゅうほど相手に思い知らせたるこっちゃ。  言うてもわからんようなら、わかるまで断固として口きいたれへん。背中向けて、呼ばれても無視し続

村山由佳 もみじの言いぶん 第4話「爪をととのえる」

 かーちゃんが小学校に上がった頃やから、おおかた半世紀も前の話やけどな。  新しく買(こ)うてもろた赤いランドセルが嬉しゅうて嬉しゅうて、後生大事に枕もとに置いて寝たんやて。  朝起きたら、どないなってた思う? 当時、家におった〈チコ〉いう名前の猫が、夜中に乗って爪とぎしよって、ふたが一面おろし金みたいにバリバリの傷だらけやがな。  一年生のかーちゃんはめっちゃ悲しかったけど、ここで泣いたらチコがかーちゃんのかーちゃんに怒られる、思(おも)て我慢して、そのランドセルで六年間通

村山由佳 もみじの言いぶん 第3話「花は咲く」

 若い時分はうち、ほんまによう遠出しとった。  放浪癖っちゅうのかいな。家から一歩出たとたんに、散歩やら旅やら区別つかんようになりさらして、時間も日にちも忘れてほっつき歩いてまうねん。  今考えたら、かーちゃんめっちゃ心配しとったやろなと思うけど、反対にうちのほうが待たされることかてぎょうさんあったから、おあいこやん、なあ?  年とってからはもう、外へは全然出ぇへんようになってしもたし、たまに抱っこしてもろて外の世界を眺めるのんは、なかなか愉(たの)しかったで。  今年もそろ

村山由佳 もみじの言いぶん 第2話「ずっと一緒」

 うちのかーちゃんな。言うたら何やけど、アカンタレやねん。うちがそばにおらんようなってすぐの頃なんか、べそべそ、じめじめ、ほんま鬱陶(うっとう)しかってん。  皆さん、知っとる? あのボトル型のネックレス。中に、〈これってもしかして天使の骨やないん?〉いうくらい神々(こうごう)しいうちの骨を納めたあのネックレス。  ガラスやし、あの女のこっちゃからカクジツに落として割るやろ? ふだん家におる間は、危なかしゅうて身に着けられへん。  せやけど、な、これやったら心配要らんのんちゃ

村山由佳 もみじの言いぶん 第1話「安眠妨害」

 どちらさんも、ご機嫌さん。もみじですー。しばらく留守しとってかんにんやで。  ここな、最近のうちの居場所。  かーちゃんととーちゃんが毎日、前を通るたんびに、 「もみちゃん、おはよ」 「今日も可愛(かい)らしねえ」 「行ってくるわな。すぐ帰るから待っときや」 「おやすみ、もみじ。夢に出てきてな」  て、しょっちゅう話しかけてくるから、ぜんぜん淋しないねん。ちゅうか、むしろ安眠妨害やっちゅうねん。正味の話。  あとな、二人とも気づいてないみたいやけど……  ベッドの上、こっか

【電子書籍化】愛らしい写真満載。村山由佳『もみじの言いぶん』が電子書籍になりました。

エッセイ『猫がいなけりゃ息もできない』や、NHKのドキュメンタリー番組「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」が放送されたのをきっかけに、多くの人に知られ、愛されるようになった、作家・村山由佳さんの愛猫〈もみじ〉。 彼女が17歳で今生を旅立ってから2度目の3月、フォトエッセイ『もみじの言いぶん』の電子版の配信が始まりました。(※この記事の見出し画像は紙版のカバーです) 著者自ら撮影した愛あふれる写真の数々に、村山さん=「かーちゃん」へのもみじの言いぶん(なぜか関西弁)を添えた本書