野良猫様の多い街は良い街だ――想田和弘『猫様』10月18日(金)発売!!
この本について
瀬戸内海に面した街で暮らす猫たちを中心に、人間と自然の関係や、これからの社会について考察するフォト&エッセイ。
「週刊金曜日」の好評連載、待望の書籍化。
【本文より】
外で暮らす猫様たちと付き合っていると、人間が支配するこの社会から彼らの居場所がどんどん 縮小され続けていることにも気づかされる。 社会がその隅々にいたるまで管理・コントロー ルされ、消毒され、安全でキレイに整頓されればされるほど、制御不能でイレギュラーな存在である野良猫様は生きていく余地がなくなる。 僕が子どもの頃は、近所にはまだ野良犬様がウ ロウロしていた。人々はそれを当然のことだと思っていた。この社会は、今よりもずっと野蛮だったのだ。同時に、制御不能な存在をなんとなく包容する力と大らかさを備えていた。 だが、社会が高度に管理され整頓されていくな か、野良犬様たちは次第に人間の健康と安全を脅 かす存在だとみなされるようになった。 そして街から一掃された。 今、同じようなことが、猫様にも起きているような気がしている。
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著者プロフィール
想田和弘(そうだ・かずひろ)
1970 年栃木県生まれ。映画作家。東京大学文学部卒。スクール・オブ・ビジュアルアーツ映画学科卒。台本やナレーションを用いない「観察映画」の手法とスタイルでドキュメンタリー映画を作り続 ける。監督作品に『選挙』『精神』『Peace』『港町』などがあり、国際映画祭等で受賞多数。最新作は牛窓で撮影した「五香宮の猫」(2024年ベルリン国際映画祭招待作品)。著書に『カメラを持て、町へ出よう』(集英社インターナショナル)、『なぜ僕は瞑想するのか』(ホーム社)などがある。