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100年に一度のグランド猫の日記念  「ホーム社猫祭」 第1部

皆さん、毎年2月22日が「猫の日」と呼ばれているのはご存知でしょうか?
そして今年の猫の日は、2022年2月22日。
なんと2が6つも並ぶ、100年に一度のグランド猫の日なのです。

ホーム社ではそんな特別な猫の日をお祝いすべく、会社を挙げて『100年に一度のグランド猫の日記念 ホーム社猫祭ニャンフェスを行うことになりました。

ここから先はそんなホーム社猫祭ニャンフェスだけの特別な企画が目白押し
猫好きのあなたも、たまたま覗いてくださったあなたも、ぜひ最後までご覧いただけたら嬉しい限りです。

1.記念エッセイ「猫と生きる」

「作家には猫好きが多い」そんな噂を聞いたことがある方も多いはず。
古くは夏目漱石や池波正太郎、三島由紀夫なども猫好き作家として知られています。今も昔も猫は人間の良きパートナーであり、多くの作家がその魅力に惹かれているようです。
また作家以外にも、書店員やイラストレーターなど、本にかかわる仕事をされている方にもなぜか猫好きが多いのだそう。

今回は、ホーム社ゆかりの猫好き4名のみなさまをお招きし、「猫と生きる」をテーマにご自身と愛猫とのエピソードをご寄稿いただきました。
ここでしか読めない貴重なエッセイ、どうぞお楽しみください。

***

村山由佳「あちら側とこちら側」

 十五年ほど前、私がとある理由から東京での独り暮らしを選んだ時、連れて出たのは〈もみじ〉だけだった。その後〈銀次ぎんじ〉が加わり、一緒に軽井沢のこの家へ引っ越してきた。
 そこへ子猫だった〈サスケ〉と〈かえで〉がもらわれてきて、おまけに父の忘れ形見となった〈青磁せいじ〉を引き取ることになり、そうこうするうちにもみじが十七歳十ヶ月で逝ってしまったかと思うと、一年後には身重の〈絹糸きぬいと〉がはるばるやってきて難産の末に〈さく〉と〈フツカ〉を産み落とした。
 ちなみに〈楓〉のもとへはボーイフレンドの〈梅田うめだ(仮名)〉が時たま通ってくるけれど、とりあえずは員数外として、さて、我が家には全部で何匹の猫がいるでしょうか?

  ……などと算数の問題にしたくなるくらい、うちは常日頃から猫たちにふりまわされている。
 毎朝、目が覚めていちばんにするのは猫たち全員の水替えだ。まずは、もみじへのお供えの水。それから、生きている連中の水。
 フードの減りをチェックし、トイレの砂を覗いては立派な一本が横たわっていることに安堵し、おしっこの塊を数えては健康状態を把握、少しでもおかしいと思えばいつもの動物病院に相談する。糖尿病を患っているサスケには八時間おきにインスリンを注射し、時々おなかをこわす銀次にはそのつどサプリを飲ませる。
 基本的に夫婦揃って家を空けることはない。どうしても必要な場合のみ、サスケだけは病院に預かってもらい、なじみのキャットシッターさんにお留守番組のケアをお願いしている。ペット保険には、もみじ亡き後、全員が加入した。出費はばかにならないけれど、いざ治療となればもっとお金がかかるわけで、これから先、どの子に何があろうとできる限りのことはしてやりたいと思ったからだ。
 それでもなお、間に合わないことはある。
 しばらく前、突然、青磁が逝ってしまった。よく眠っていると思って、何げなく「せーいじくん」と撫でたら、もう冷たく硬くなっていた。
 誰にも迷惑かけずに黙って立ち去るなんて、もとの飼い主である父を見習ったかのようだった。迷惑なんていくらかけてくれてもよかったのにと思いながら、彼のためにもっと出来たかもしれないことへの後悔に、あとからあとから涙があふれた。青磁も父も何しろ偏屈だったから、いざ治療となればさぞかし苦労しただろう。けれどそうした日々の記憶でさえ、思い返せば宝になることは、もみじの時でよく知っている。
 以来、私は、猫たちの寝姿がちょっと怖い。ぴくりともせずに眠っているとつい、まさか……と揺さぶり起こしては嫌がられ、いかにも猫らしい不機嫌な顔にほっとする。
 そうしてそのたびにつくづく思うのだ。
 生きているって、息をしているって、なんてすごい奇跡なんだろう。

  冒頭の計算問題の答えは「七匹」で、青磁がいなくなった今は「六匹」になった。でも、毎日のように青磁の気配を家のあちこちに感じるし、それを言うならもみじだって、どこか天井のすみっこのあたりから私たち全員を見守っている感じがする。
 もしかすると、こちら側とあちら側の間には、思うほど大きな隔たりはないのかもしれない。そう、良くも、悪くも。
 そのことを時によって喜んだり悲しんだりしながら、私たちは皆、いつの日か同じところへ辿り着くまでの間、今いる側に懸命にとどまり続ける。

むらやま・ゆか●作家
好評発売中『命とられるわけじゃない』

青磁・オス・享年13歳
左上から時計回りに絹糸(お絹)・メス・3歳、銀次・オス・14歳、
楓・メス・7歳、朔・メス・2歳。
左上から時計回りにフツカ・オス・2歳、サスケ・オス・7歳、
もみじ・メス・永遠のセブンティーン、梅田・オス・年齢不詳。

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安村正也「夢の猫本屋ができるまで 静寂編」

 当店のレジの背後には、巨大な猫の頭、「リアル猫ヘッド」が鎮座している。この羊毛フェルトの被り物は、店長猫・三郎の化身だ。猫本専門書店であるキャッツミャウブックスは、この三郎がいなかったら生まれなかったと言ってもよい。2002年に保護した三郎には、一郎と次郎(共に仮名)という兄弟がいた。しかし、その命を救うことができなかったため、いつか代わりの猫を助けたいという想いが、「元保護猫が看板店員となって本屋を救い、本屋が売り上げから保護活動に寄付をして猫を救う」という当店のコンセプトにつながった。三郎と彼をモデルにしたリアル猫ヘッドは、保護猫と本屋が互いに助け合う関係の象徴なのである。
 ただし、今となっては、この店を開いたことが三郎には良かったのだろうかという後悔の念も抱いている。2017年の開店までの15年間、ずっと筆者夫婦を一匹占めしていたところに、ジェネレーションαの女の子たちが店員猫として突如やって来たのだから。三郎は彼女たちの存在を認めようとせず、2階の自宅から1階の店舗へ降りて来ようともしなかった。さらには、ロフトにつながる階段の隙間から店舗の方へと顔を出し、我々を呼ぶかのように、狭い店内に響き渡る大声で頻繁に鳴き叫んだ。それにも関わらず、ビフォーコロナの頃は忙しくレジに張り付いていたため、彼のそばに居る時間は大幅に少なくなっていたのである。
 三郎が亡くなったのは、東京に1回目の緊急事態宣言が発出されていた2020年4月。開店準備の頃から悪くしていた腎臓の病状が進み、寝たきりのようになった彼を店の休業期間中にゆっくりと看取れたのは、皮肉な罪滅ぼしだったのかも知れない。現在、三郎の遺骨は、開店直前にFIP(猫伝染性腹膜炎)で亡くなった初代番頭・Dr.ごましお、2020年8月に亡くなった最強フォトジェニック店員・鈴と共に並んでいる。どうか今は、虹の橋のたもとで仲良く暮らしていますように。
 コロナ禍でお客様も減り、三郎の叫び声もなく、すっかり静かになった店内では、現役店員のチョボ六、さつき、読太よんたがすやすやと眠っている。そして、三郎の化身は、今日も永遠の店長として、レジに立つ私に背後から無言で何かを伝えている。

やすむら・まさや●キャッツミャウブックス店主
好評発売中『夢の猫本屋ができるまで Cat’s Meow Books』

永遠の店長、三郎の化身こと「リアル猫ヘッド」。
左上から時計回りに三郎・オス・享年18歳、チョボ六・メス・6歳、
読太(よんた)・メス・5歳、さつき・メス・6歳。

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賽助「ペット可物件は家賃が割高」

 子供の頃から猫が飼いたくて仕方がなかった。
 けれど、父方の祖母が猫嫌いだったので猫を飼うことができなかった。ならば犬はと考えもしたが、母方の祖母が犬嫌いだった。そもそも自分は喘息持ちだったので、ペットを飼うことは許されなかった。
 再び猫を飼いたいと思うようになったのは三十代も半ばを過ぎた辺り。猫を飼うためにペット可物件を探し、猫を飼わずに一人で暮らしていた。
 飼えなかった理由は、独身で飼育経験の無い男だったから。保護猫を希望していたが、里親になる応募条件を満たしていなかった。
 それからしばらくの間、ペット可物件に一人で住む生活が続いたが、ある日、とあるSNSで4匹の猫の里親募集という文言を見つけた。勇気を出して連絡を取ってみると、独身未経験男でも問題無いという。
 早速猫に会いに行った。幻滅されないように散髪し、ひげった。
 保護主さんによると、4匹の猫たちはきょうだいで、商業施設の駐車場にいたらしい。私はその中からよくなついてくるオスのキジ白を選ぼうとしたが「2匹だと猫も寂しくないですよ」とアドバイスされた。
 それならばメス猫かな……とふと目をやると、1匹だけ、全く顔を見せず逃げるように暗がりでじっとしているオス猫が。
 保護主さんも「お前はアピールが下手だね」と困り顔だった。
 ハッとした。私は保護主さんに気に入られるために散髪をしてきたが、彼ら猫たちも、私に気に入ってもらえなければならないのだ。
 暫く考えたすえに、よく懐いてきているキジ白と、全くアピールできていないその子を連れて帰ることにした。
 人見知りは私も一緒だ。
 早く懐いたキジ白は早助そうすけ、逃げてばかりいたキジトラには退助たいすけと名付けた。

 あれから早4年。
 初めて我が家に来た時と同じように、2匹は今も一緒に寝ている。
 名前を呼んでも来てはくれないし、夜も一緒に寝てはくれない。けれど、お気に入りの場所を取り合ったり、夜中に追いかけっこが始まったりとそれなりににぎやかだ。

 何より、ペット可物件に猫と住めるのは、幸せなことだ。

さいすけ●作家
HBにて好評連載中 「続 ところにより、ぼっち」

キジ白が早助。キジトラは退助。(二匹ともオス・推定4歳半)

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山本さほ「ネコとケンカ」

やまもと・さほ●漫画家
HBにて好評連載中(イラスト担当)
賽助「続 ところにより、ぼっち」

トルコ(愛称トルちゃん)・メス・16歳。

2.北澤平祐 猫の日記念イラスト・メイキング動画 

『ぼくとねこのすれちがい日記』の著者であり、千早茜さんの「わるい食べもの」シリーズの装画なども担当されている北澤平祐さん。
今回、この特集のために特別なイラストを描いていただきました。

ここでは、そんな北澤さんのオリジナルイラストが出来るまでの様子を動画でご紹介します。
普段は見ることのできない貴重な映像なので、ぜひ最後までご覧ください。

完成イラスト

今回描いていただいたイラストは今回の特集のバナーに使用したほか、この特集を最後まで見ていただいた方へのお礼としてダウンロードして使えるブックカバーも作成しました。
ブックカバーは「第2部」の最後で配布していますので、ぜひチェックしてみてください。

きたざわ・へいすけ●イラストレーター
好評発売中『ぼくとねこのすれちがい日記』

「ホーム社猫祭 第2部」へ続く

【第2部 コンテンツ紹介】
3.ホーム社猫本紹介
4.ホーム社メンバーの愛猫紹介
5.ブックカバープレゼント

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