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まだアラフォーだけど、エンディングノートを書いてみた 藤谷千明・蟹めんま『バンギャルちゃんの老後』

身内の介護や老後問題。先の見えない世の中でオタクが考える理想の老後とは!? 趣味に生きるバンギャル(※ヴィジュアル系バンドのファンのこと)2人が、オタクならではの視点から介護業界にガチ取材をする体当たりルポ・エッセイ『バンギャルちゃんの老後』より一部を公開します。


「エンディングノート」というと、映画やドラマでは「最期までにやっておきたいことリスト」のような形で登場することが多いですが、実際は「もしものときの連絡ノート」のようなものが主流なんだとか。私自身40歳を過ぎて、1週間程度の入院も経験。アラフォーといえども「もしものとき」とは無縁ではありません。

エンディングノートに挑戦! しかし早くも挫折…?

蟹めんま(以下、蟹) 祖父や父が亡くなったこともあって、自分の情報を遺しておくことの大事さを痛感したので、自分でもエンディングノートは用意しておきたいと思いました。

藤谷千明(以下、藤谷) さっそく書いてみましょ!

 これは……、なかなか書くことが多いですね。

藤谷 生年月日や口座情報、家族構成はもちろん、インターネットサービスのIDなど、現代人の生活は必要な情報が多いから、自ずと記入項目も増えていくんですね。しかし、自分のお葬式やお墓の話なんかは、気が遠くなってしまいますね。そもそも「どうしたいのか」も自分でもわからない。

 バンギャルだからでしょうけど、葬式BGMだけはとめどなく書けますね。私、通夜ではDIR EN GREYの『MACABREー揚羽ノ羽ノ夢ハ蛹ー』、葬儀では『Ranunculus』がいいんですよね。

藤谷 それはとてもわかる。許されるなら、出棺のときはLUNA SEAの『WISH』をかけて銀テープを飛ばしてほしいな。ダメか。

 銀テープ、いいですね。銀テにはロゴと手描きメッセージを入れたいです。あと自分の出棺はUCHUSENTAI:NOIZの『METEORS』であの世に向けて発進したいんですよ。いかん、話がそれてしまう。やっぱりエンディングノートなんてアラフォーの我々には早すぎたんでしょうか……。

藤谷 これはもう、助けてもらうしかない……このノートを作っているコクヨさんに!

コクヨさん(以下、コクヨ) はい、呼びましたか?

 呼べるんだ!?

藤谷 「エンディングノート」にチャレンジをしてみたものの、軽く挫折しそうです。そもそもアラフォー世代が手を出すには早すぎましたかね?

コクヨ いえいえ、こちらの「もしもの時に役立つノート」は、もともと30代、40代の方に使っていただけるようにと考えて企画しているんですよ。

藤谷 えっ! 我々はドンピシャ!?

コクヨ ご高齢の方でも困らない文字のサイズにはしているのですが、幅広い年齢の方に使ってほしいと思っています。ご購入者を対象にしたアンケートでも、50代以下の方が半数を占めています。30~40代が45%で、20代でも買ってくださる方がいます。親のために買ってみたけれど備忘録に便利だったので自分の分も買ったという方や、気に入って同窓会でお友達に配ったというお話も聞いたことがあります。

 間口が広い分、人にすすめやすいのはあるのかも。それに、今は新型コロナウイルスの影響で、「もしもの入院」の可能性も高いですし、どさくさに紛れてこういう相談もしやすい時期ですね。

コクヨ そもそも、この商品のシリーズは約10年前に「家族と相続や遺言について相談したいけど、きっかけがない」という声を聞いて生まれました。ウチの商品なら全国の文房具店さんで気軽に買えますしね。まず最初に「遺言書キット」を発売しましたが、「まだ遺言という言葉には気持ち的な抵抗感がある」というご意見もありました。そこで、生きているときにも日常生活の中で「備忘録」として役立つノートを作ろうという話になったんです。お二人のように30~40代だとまだお葬式なんて考えたくないという方もいらっしゃいますし、最初から最後まで完璧に書かなくてもいいんですよ。

藤谷 それを聞いて安心しました(笑)。

 「備忘録」って考えると、災害だったり、新型コロナウイルスの影響だったりで、自宅以外の場所に行かざるを得ないケースもありますよね。そういう時にも役立ちそうです。

コクヨ このノートを「防災リュック」の中に入れているというお話も何度か聞いたことがあります。「災害時にパソコンは浸水して壊れてしまったけれど、ノートに口座情報などをまとめていたので、それを手がかりにしてスムーズに通帳の再発行の手続きができた」というメッセージをくださったお客様もいました。

 「エンディングノート」というけれど、いろんな使い方があるんですね。

藤谷 では、コクヨさんと一緒に、改めて記入項目を見てみましょう。

「エンディングノート もしもの時に役立つノート」の記入項目

〈自分の基本情報〉
名前、生年月日、現住所、過去の住所、健康保険証番号、パスポート番号など
〈資産状況〉
預貯金、自動引き落とし、不動産、ローン、クレジットカード情報、加入している保険、年金情報など
〈気になること〉
携帯、PCの情報、登録しているサイトのID、宝物コレクション、ペットの情報など
〈家族、親族〉
家族・親族の名前や住所、親族表、命日、冠婚葬祭の参加歴など
〈友人、知人〉
友人、知人の名前や連絡先
〈健康管理〉
かかりつけ病院、持病、アレルギー、告知・延命処置の希望、介護の希望など
〈葬儀、お墓〉
葬儀の希望、お墓の希望、所在地など
〈遺言、相続〉
遺言書について、相続の希望、大切な人へのメッセージなど

 ノートの中で「まずここは書いたほうがいい」みたいな項目はありますか?

コクヨ ユーザー様のご意見をみると、銀行口座や保険を優先して書いていらっしゃる方は多いようです。近年はネット銀行などの通帳のない銀行も増えているので、家族は口座の存在を知らない、調べ方もわからないというケースもあるようです。

 遺された人が保険や口座の存在を把握していないと、保険金の申請や口座の解約もできないですもんね。ウェブサービスの記入欄もありますが、契約しているサブスクも書いておいたほうがいいかも。

コクヨ ほかには、宝物コレクションを重要視している方も多いようです。

藤谷 この項目は我々も気になりました(笑)。

コクヨ この本は、「趣味と老後」がテーマだそうですが、私も実は「お人形」を集める趣味がありまして……。球体関節人形を少々お迎えしていて……。

 まさかのドールコレクター! しかも「ガチ」の人だ。

藤谷 この言い方は、絶対「少々」の数じゃないですよ。

コクヨ なので、自分にもしものことがあった場合、人形たちが捨てられてしまったらかわいそうじゃないですか。だから家族にも「もしもの時はこの子は○○さんにあげてほしい」といろいろ伝えていたんですが「覚えられないよ」と。詳しくない人からしたら、そうですよね(笑)。

藤谷 それはたしかに。我々も「その筋の人」しか価値がわからない物品をしこたま抱えています。そんなコクヨさんだからこそ、コレクションのページがあったんですね。

コクヨ そうなんです、自分自身にとっても必要なノートを作りたかったんですよね。もちろん、コレクション系の趣味がない方でも、お話をお聞きすると皆さんご自分にとっての宝物をお持ちだったりしますので、このページを気に入って書いてくださる方も多いです。あとはペットの情報を重要視されている方もたくさんいらっしゃいますね

エンディングノートは「これまでの自分の棚卸し」!

 CD-Rなどのディスクを入れるフォルダもあるんですね。私はここに「お葬式の時に流してほしいBGM」を入れたいですね。

コクヨ そうですね、音楽にこだわりのある方は多くて、「クラシック曲の中で、この指揮者のCDがいい」みたいに、家族でもわからないような細かい要望を持っている方もいるので、CDを入れておいたほうがいい場合も多いと思います。

 自分の宝物を改めて書いたり、好きな曲をCD-Rに入れたり、エンディングノートを書く楽しさもわかってきました。

藤谷 「好きな食べ物」、「呼ばれていたニックネーム」、「好きな芸能人」なんかも書く欄がありましたけど、小学生の頃に書いたプロフィール帳みたいですよね。

コクヨ 趣味や好きな音楽って、家族や周りの人がすべてを把握しているわけではないじゃないですか。お葬式以外でも、例えば入院したり介護施設に入ったりする場合にも、好きな音楽を流すことで元気付けられたりするでしょうし、他にも「好きな食べ物」欄や「友達から呼ばれていたニックネーム」なども介護の現場で役に立ったりするそうです。ですので、“エンディングの準備”というのもありますが、「これまでの自分の棚卸し」感覚でも、利用してもらいたいですね。

藤谷 友人欄も大事ですよね。普段、本名じゃない名前でしか呼んでいない人もいるし(じっと横を見る)。

 私ですか! たしかに周囲から「めんまさん」と呼ばれることのほうが多いです。趣味友の本名を知らないということは、我々の世界ではよくありますからね。

藤谷 友人以外でも、「○○(地名)のおじさん」呼びでしか把握してない親戚とか、います。

「おまかせする」ばかりでもOK、意思を示すことが大事

 そうそう、お墓やお葬式の欄は書くのに悩みましたね。

藤谷 「おまかせする」「お金はかけたくない」ばっかりにチェックしちゃいましたね。戒名とか想像もつかなかったので、やっぱり「おまかせする」になってしまいました。

コクヨ それは、遺された人たちに「おまかせする」ということが伝われば、それはそれでいいんです。「もっと盛大にやってあげたら良かったのでは」という後悔が生まれないので。

 今自分が死んだら、最初にノートを見るのは高齢の母なので、「何もしなくていい」って書いたけれど、もしかしたら将来もっとやりたいお葬式も出てくるかもしれないですし。

藤谷 でも「(葬儀の)費用を用意してない」という項目にチェックするたびに、やや罪悪感はありますね。介護に関する項目も、費用から他のことまで、誰にも何にも相談していないので、そこに関しても改めて考えてしまいました。

コクヨ 若い人はみんなそうだと思います。

 ここまで書いて思いましたが、これは元気な時にノリや勢いでもいいから書き始めておいたほうがいいかも……。正直ガチで死期が迫った人に「書いて」とは言いにくいボリュームです。

藤谷 早めに親にも書いておいてほしいですけど、すすめるのにやっぱり勇気がいりますよね。どう切りだせばいいでしょうか?

コクヨ お正月やお盆に毎年ご家族で情報アップデートをしている人もいるそうです。結婚や出産をきっかけに書いたという方、あるいは重い病気ではないけど、健康診断でひっかかったから書き始めたという方もいらっしゃいました。

藤谷 きっかけはなんでもいいんですね。

 普段自分でも意識しないことだったり、これまでの自分をふり返るためにもいいし、これを書くことで、「ちゃんとしたことを書けるような自分になろう」と思えるようになりました。

藤谷 まさに「自分の棚卸し」だ!

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著者プロフィール

藤谷千明(ふじたに・ちあき)
1981年生まれ。自衛官、書店員などの職を経てフリーライターに。バンギャル歴は約四半世紀。著書に『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』などがある。介護職員初任者研修を取得し、訪問介護にも従事する。
Twitter: @fjtn_c

蟹めんま(かに・めんま)
漫画家・イラストレーター。奈良県出身・在住。バンギャル歴20年以上。著書に『バンギャルちゃんの日常』『バンギャルちゃんの挑戦』『今日もライブに行けません!~アラフォーバンギャル、魂のV系語り~』などがある。介護職員初任者研修修了。
Twitter: @kanimen

コクヨ
1905年創業の文具・オフィス家具メーカー。「キャンパスノート」をはじめノート・紙製品を数多く製造。気になっていることを整理したい、自分の考えを書き残しておきたい人を応援する「ライフイベントサポートシリーズ」を2009年から発売。

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