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村山由佳 猫がいなけりゃ息もできない 第1話「まさかの5匹目」

二度の離婚を経験し、現在は軽井沢で猫5匹と暮らす作家の村山由佳さん。「思えば人生の節目にはいつも猫がいた」というムラヤマさんがつづる、小さな命と「ともに生きる」ということ――。
書籍の表紙を飾ったこともある、人気の姐さん猫〈もみじ〉の写真も満載。
※本連載は2018年10月に『猫がいなけりゃ息もできない』として書籍化されました。

 4匹で、いっぱいいっぱいのはずだった。まさかここへきて猫がもう1匹増えるとは思わなかった。
 今年の4月、ちょうど桜の頃に、南房総で独り暮らしをしていた92歳の父が亡くなった。私たちがたまたまサプライズのつもりでお寿司を買って訪ねていくと、廊下にうつぶせに倒れていて、もう間に合わなかったのだ。
 後からの調べでわかったことだけれど、亡くなったのは私たちが見つけるほんの2時間ほど前とのことだった。何日もそのままという可能性だってあったかもしれないのに、たまたま私に東京での仕事があって、ついでに足を伸ばして訪ねていこうと決めた日に倒れるなんて、考えれば考えるほど不思議だった。呼ばれた、のかもしれない。
 もとより母は数年前から何もわからなくなってしまって施設に入っているので、父が可愛がっていた猫・9歳のラグドール〈青磁〉は、葬儀も何もかもが済んだあと、私たちの住んでいる信州・軽井沢まで連れて帰る以外になかった。

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 しかし、先住猫たちが彼を受け容れるかどうか。
 最長老、17歳の三毛猫〈もみじ〉はまあ、特別待遇で奥の間に隔離されているからいいとしよう。
 10歳になる大きなメインクーンの〈銀次〉も、細かいことにまったくこだわらない呑気な性格だから大丈夫。
 問題は、〈サスケ〉と〈楓〉──もうじき3歳になる兄妹だ。もとはといえばスーパーの掲示板に「子猫生まれました」と張り出されていたのを見て、もらってきた猫たちで、身内には甘えん坊だが見知らぬものに対しては警戒心の強い、言ってみればとても猫らしい気質を持っている。
 彼らが、青磁を仲間と認めるだろうか。さらには青磁自身が、新しい環境に馴染めるのかどうか。
 いろいろと心配ごとはあったけれど、ものごとというのはすべからく、なるようになるし、なるようにしかならない。
 父が元気だった頃よく一緒に出かけたホームセンターで、ひときわ頑丈そうなキャリーケースを買い、青磁を車に乗せて家へ連れ帰った。

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※本連載は2018年10月に『猫がいなけりゃ息もできない』として書籍化されました。

村山由佳(むらやま・ゆか)
1964年東京都生まれ、軽井沢在住。立教大学卒業。1993年『天使の卵―エンジェルス・エッグ―』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。2009年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞を受賞。エッセイに『晴れ ときどき猫背』など、近著に『嘘 Love Lies』『風は西から』『ミルク・アンド・ハニー』『燃える波』などがある。

※この記事は、2017年8月22日にホーム社の読み物サイトHBで公開したものです。

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