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【試し読み】吉田豪著『書評の星座 紙プロ編』より、まえがきを公開!

吉田豪さんのプロレス・格闘技本書評集の第2弾『書評の星座  紙プロ編 吉田豪のプロレス&格闘技本メッタ斬り 1995-2004』が、2月26日(金)に発売されました。
95年より04年まで『紙のプロレス』『紙のプロレスRADICAL』に掲載され、プロレス・格闘技界を騒然とさせた問題連載を完全収録した本書より、吉田さんが当時を振り返った「はじめに」を公開します。

はじめに

  05年から03年までの『ゴング格闘技』での連載をまとめた単行本『書評の星座』が予想外に売れたらしくて、とうとうこんな本まで出ることになってしまった……。『ゴン格』以前、判型の小さな『紙のプロレス』で 95年に連載が始まり、『紙プロ』休刊後は『紙のプロレスRADICAL』で復活したが、04年にトラブルで連載終了となった、オリジナル版『書評の星座』の単行本化である(『Kamipro』でも連載していたつもりでいたけど、『紙のプロレスRADICAL』から改名したのが05年だから勘違いだった模様)。時期でいうと、ボクが20代半ばのときに始まり30代半ばで終わるので、言わば「ボクの紙プロ青春記」とでも表現すべき連載だ。

 そもそも30代半ばから現在までの比較的落ち着いた時期の原稿をまとめた前作ですら、いま読んだら口が悪すぎてビックリしたぐらいなんだから、それからさらに10年も前の文章なんて自分でも読むのが怖い! 埋めたつもりもないタイムカプセルを勝手に掘り起こされて、目の前に突き付けられているような感覚! 

 前作でも書いたように、当時のボクはまだ年齢的にも若くて編集の仕事を始めて数年だし、古本でそれなりに学習しているとはいえプロレスや格闘技を見始めて日が浅かったから、「俺みたいな素人でも知っているようなことを年上のプロが何もわからず、ズサンな本を出しているのは許せない!」とばかりに、触る者みな傷つける勢いでとにかく片っ端から噛み付きまくっていたわけなのである。それもかなり口汚く。

 いまとなっては完全にアウトだと思うのが、相手の文章のみならず外見的な部分にも容赦なく噛み付きまくっていたことだ。それ、自分のルールとしていまは絶対にやらないし、いまでもやってる人は正直どうかと思ったりするぐらいなのに、当時はそれを連発しまくり! 「内容もそうだけど、そもそも作者のビジュアルが気に入らない」ぐらいのことを平気で何度も書いてるから、20代半ばの自分の無軌道ぶりに戦慄!

 ここ最近、「10年以上前の発言をいまのルールで批判するのはどうかと思う」的なことをボクはよく言っているんだが、まさにそれが伏線になっていたわけで。とりあえず、あの頃のボクは完全にどうかしてました! もちろん、そういう部分は今回細かく修正させていただいた次第なのである(ただし、完全に削ると辻褄が合わないところは痕跡を残してたりもする)。

 ……と言っても、実は前作と比べても直しを入れた部分はそれほど多くなくて、時間を置いたことで時事ネタが全然伝わらなくなってる部分や、文章を読みやすくするための直しを入れたぐらい。相手の外見はともかく、本の内容に関してはいくらでも罵っていいといまでも思っているし、その点に関しては当時から意外なぐらいにちゃんと批判するべきところを批判しているんだなと自分でも思った次第。いやホント、プロレス〜格闘技知識もさほどない若造にしては、当時からかなり的確な攻撃を加えているよ! 根性も据わっているし、よくここまで書いてプロレス会場のバックステージとか平気でウロウロできたなと我ながら思うほど。いや、安生×前田ばりに後ろから殴られてもおかしくないでしょ、これ!

 そして、最初のうちは噛み付くのは上手いけれど、いい本を褒めるのが本当に下手だし、文章も粗いし、 そもそも引用書評のやり方もかなり手探りだし(最初期はあまり引用もしていない)、「こういう本にするべきだった」的な謎のアドバイスも連発していたのが(それも若造が偉そうに上の人間にアドバイスするというネタだったと思う)、だんだん文章力が向上していくドキュメントにもなっているはずなのである。

 なお、小さい『紙プロ』時代は大ネタが1ページ、小ネタが1ページに3本の見開き連載だったので、その文字数ジャストの原稿を書かなきゃいけないという苦労もあったけど(『ゴン格』時代も毎回同じ文字数 の1ページ連載)、『紙のプロレスRADICAL』時代は好きなだけ原稿を書いて後からデザイナーが調整するルールだったので、長い書評はとことん長いし、短い書評を大量に載せたりもできたし、ページはいくらでも奪い取れたし、スケジュールがキツいときは勝手にページを減らしたりした。そこまで自由が利いたのにはもちろん理由もあるが、それについては書き下ろしコラムで詳しく書くとして、読む前に知っておいたほうがいい情報として、とりあえずこの連載が始まった頃の時代背景を簡単に説明しておこうと思う。

 95年は4月2日にベースボール・マガジン社主催のオールスター戦『夢の懸け橋』が東京ドームで開催されたり、10月9日には新日本プロレスとUWFインターナショナルの全面対抗戦が東京ドームで開催されたりと(ちなみに94年11月20日には女子プロレスのオールスター大会が東京ドームで開催)、90年代プロレスバブルの頂点みたいな年。全日や新日といったメジャー団体もU系も女子プロレスもインディーもそれぞれ元気で、だからこそ三井物産もデジタル衛星放送のFIGHTING TV サムライ開局に動いたんだろうし、その余波もあって96年には『紙プロ』が分裂。 FIGHTING TV サムライ派とテレビ『リングの魂』の雑誌版『Rintama』派に別れ、ボクはそのどちらとも仕事のできるフリーの道を選んだ。そして『リングの魂』スタッフと喧嘩別れした山口日昇は、前田日明ばりに一人ぼっちで『紙のプロレスRADICAL』創刊。しかし、創刊号ではインタビュー以外の企画ページを作る余裕もなかったためか、創刊2号目では「豪ちゃん、真樹日佐夫先生の新刊が出たから書評で紹介してよ」と山口日昇に頼まれて『男の必読書』というページが誕生。これが創刊3号目からの書評連載復活のきっかけにもなったはず。そして、創刊2号目からボクが他誌でやったインタビューのノーカット版を載せたり特集用に長文を書き下ろしたりでサポートをするようになり、『紙のプロレスRADICAL』の方向性が定まっていくのである。

 その後の流れについてはあとがきで!

この続きは本書でお楽しみください

【新刊情報】吉田豪著『書評の星座 紙プロ編』が2月26日(金)発売。あの問題連載が帰って来た!

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