ひらめきはある朝、突然に(アイデアのつくりかた) ナカムラクニオ
ゼロから1冊の本が生まれるまでのプロセスを、著者のナカムラさんが実験的に日記で公開していきます。#2
[毎月第2・4金曜日更新 はじめから読む]
2022年の初夏。僕と編集のTさんは、何度目かの作戦会議を6次元で行なっていた。ここで、ようやく正式な新刊のタイトルが決まった。『こじらせ美術館〈恋愛編〉』改め、『こじらせ恋愛美術館』だ。
ただシリーズにするのではなくて、1作目を上回るような進化や発展がほしい。もっと色々と工夫したい。まずはレイアウトだ。これが結構、難しい。文字とイラストを読みやすいように配置するわけだが、新しさ、面白さ、読みやすさを考えなければいけない。うーーーん。考えていても、なかなかいいアイデアが思いつかない。
ある朝、ひらめいた。だいたい、いつもシャワーを浴びている時に何かが降ってくる。なので、頭のいろいろな場所に10分くらいシャワーを当てて、ヒントが降りてくるのを待つことも多い。今回は、イラストで4コマ漫画風に「こじらせた人生」を描けないだろうか……そんなイメージが湧いてきた。
実験的だけれど、こうすれば、文章が苦手な人でも入りやすく、情報がスッキリするはずだ。インスピレーションが湧かないときは、こちらから迎えにいけばいい。とりあえず、できなくても描いてみよう。
と、自分から提案したはいいものの、実は「漫画的な表現」が一番苦手だったのを忘れていた。
すかさず、打ち合わせをしたばかりのTさんから、レイアウトのラフが送られてきた。漫画風のイラストは仕事でたまに依頼されることもあるけれど、だいたい苦悩する。描けないわけではないが、どうも面白くならないのが悩みだ。しかし、今回こそ克服したい。
どんどんスピードを上げて、普段よりラフに描いてみる。そうやってどうにかこうにか、4コマ漫画風の絵と文章が完成した。
果たしてデザインは、どんな感じに仕上がるだろうか。『こじらせ美術館』シリーズをデザインしてくれているNILSON design studioの望月昭秀さんは、「縄文ZINE」という雑誌も発行している縄文好きの面白い人で、若い人も手に取りやすいポップな仕上げが得意だ。きっと、なんとかしてくれるだろう。そんなことを祈りつつ、データをTさんに送信した。
【「こじらせ恋愛美術館」の本づくり日記】
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