【最終回】第24話 これからのぼっち|賽助「続 ところにより、ぼっち。」
大好評のHB連載「ところにより、ぼっち。」が帰ってきた!
ゲーム実況グループ「三人称」の一員としても活躍する作家・賽助が、ぼっちな日々を綴ります。
illustration 山本さほ
※本連載は2023年7月26日(水)に『今日もぼっちです。2』として書籍化されます。書籍化にあたって第1話と最終話のみ公開します。
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2021年10月から約1年、今回を合わせて24回にわたる連載をさせていただきましたが、いよいよ最終回となります。
第1回のエッセイで僕は「積極的に『ぼっち』を味わっていきたい」と記していましたが、振り返ってみれば、ペーパードライバー講習や陶芸教室、料理教室に通い、墓参りや一人旅をして、なかなか精力的に『ぼっち活動』をしたなと思います。
他にも、深夜のドラマに出演したり、鉄塔業界の記念式典に呼ばれたりと、普段では味わえないような経験もさせていただきました。
この連載のおかげで積極的に外に出かけることができましたし、エッセイを読んでくださった皆様からの感想も頂けて、とてもよい体験ができました。
このエッセイが始まった頃にはすでにそうでしたし、現在でもまだコロナ禍は続いています。
連載開始当初は、次第に落ち着いていくのだろうと思っていたのですが、一時期は一日あたりの感染者数が過去最大になったりと、まだまだ予断を許さない状態です。
しかし、一昨年や昨年に比べて規制もだいぶ緩和されているようで、旅行もできますし、イベントの開催も多く行われるようになっています。
僕の周りでもイベントや観劇へのお誘いが増えてきました。また、人と会う機会も増えたような気がします。
一昨年くらいまでは外で誰かと会うと、その後の帰宅時に感染対策が十分だったのかが心配になったり、少しでも体調が悪いと「ひょっとして……」と不安に襲われたりしていたものですが、今ではそこまで考えることもありません。
勿論、気を緩めないようにしなければなりませんが、コロナ禍での生活が上手くなってきたのかもしれません。
イベントなども、もともとは会場に行った人しか楽しむことができなかったものが多数でしたが、現地に観客を動員できないのならとオンライン配信に切り替わったことにより、遠方のイベントでも自宅にいながら楽しめるようになり、現在はどちらか選択することもできるという方式の興行も増えました。
ロックダウンもやむなしといった時期からすれば、良い方向に進んでいるように感じます。
ただ、若干気になることがあるとすれば、活気が戻ってくるのに比例するように、飲み会などの話も耳にするようになってきたことでしょうか。
幸いにも(?)現在の僕を飲み会に誘うような人はいないので大丈夫ですが、会社や大学などでは、人数等の制限はあるとしても、また飲み会が開催され始めているようです。
飲み会が好きだった人たちにとって、このコロナ禍での自粛はかなりきつかったと聞きます。飲む行為だけではなく、人と直接会って話すのが好きだというタイプの人にとっては、オンライン飲み会では満たされないものがあったことでしょう。
反対に、いつも飲み会を断る理由を探していた僕のようなタイプの人にとっては、この情勢を素直に喜ぶことができません。
年末になれば忘年会、年が明ければ新年会、春には送別会、そして歓迎会と、定期的に開催されるであろう集団での飲み会がどうなっていくのか……とハラハラしながら過ごしている人も少なくはないでしょう。
ここ数年は『飲み会を断る理由』を探す必要がなかったと思いますし、断り方が下手になっている可能性もあります。いつ誘われてもいいように、今から準備しておきましょう。
「親戚が結婚するので……」「親戚に不幸があって……」と架空の親戚を作り上げては飲み会を断っていた人は、今一度、その親戚をどうしてしまったのか思い出しておきましょう。
長い自粛期間中に『ぼっち活動』もかなりイメージが変わってきました。
一昔前までは、一人で旅行などしようものなら「傷心旅行」だなんて言われてしまうこともあったと思いますが、今やあたりまえになりましたし、山へ出かけてソロキャンプを趣味とする人も多くなったようです。他にも一人焼肉やソロイベント参戦など、「案外一人でできること」がたくさん発見されました。
このまま様々な規制が緩和されていっても、こうした『ぼっち文化』が廃れることなく、一定の価値観を保ち続けてくれればよいと思いますし、そうなるように僕も『ぼっち活動』の楽しさを発信し続けていけたらいいなと思っています。
最後になりますが、前回に引き続きこの連載を企画してくださったホーム社の担当Sさん、文章を校正してくださったホーム社文芸図書編集部や校正者の皆様、前回に続き素敵なイラストを描いてくださった漫画家の山本さほさん、そしてこのエッセイを読んでくださった皆様に心よりお礼申し上げます。
もし皆様が『ぼっち』だなぁと感じた時、その瞬間が楽しいものであるよう、陰ながら応援しております。
僕はこれからも何かしらの『ぼっち活動』をして、時に笑い、時に失敗していると思いますので、またどこかでお会いできた日には、そのことをお伝えさせていただければと思っております。
一年間、お付き合いありがとうございました!
連載【続 ところにより、ぼっち。】
ご愛読ありがとうございました。