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仕事、家庭、恋愛の全てが欲しい女たちと、新しい家族的つながりを描く 金原ひとみ『デクリネゾン』8月26日(金)発売

食べたいものを食べたいだけ、食べたい時に食べたらいい。恋愛する母たちの孤独と不安と欲望を描く、最新長編小説。

この本について

二度の離婚を経て、中学生の娘・理子と二人で暮らすシングルマザーの小説家、天野志絵。取材で知り合い、最近付き合い始めた大学生の蒼葉と一緒に暮らしたいと娘に告げるが、娘は家を出て元夫と暮らすという。
悩む志絵の日々の唯一の安らぎは、親しい人と話しながら美味しいものを食べること。そんな食事の場に集う、小説家仲間のひかりと和香もまた、仕事と恋愛と家庭で危ういバランスを保っており……。
恋愛する母たちの孤独と不安と欲望が、周囲の人々を巻き込んでいく。

《本文より》
「母親と恋愛って、相性悪いよ。ママは無理やり両方こなしてただけじゃん。何だかんだしょっちゅう家空けてたし」
「多くの人はゼロか百かで生きてないんだよ。二、八とか、六、四とかで生きてる。今は世界的にステップファミリーが増えてるし、母親とか父親を恋愛と切り離すのは保守的かつ不自然だよ」
「私はただ、今の生活が心地いいって言ってるんだよ。ママがデートに行くたびにパパたちとかおばあちゃんが駆り出されてるの、なんかちょっとなって思ってたし」
「子供を持ったら恋愛するなって言うの? 別に子供の心地よさを追求してやることだけが親の人生じゃないでしょ。きつかったかもしれないけど、受験勉強をしたから理子は今の中学に入れた。楽な方にいくだけがいいことじゃない」

 ひかりには二歳の息子が、和香には十歳の息子がいる。現代に於いて、働きながら子供を育てている女性は、難しいバランスを保っている。例えばひかりは仕事4家庭4恋愛2くらいの比率に見える。非常に安定していて危なげがないが、恋愛の割合が若干少なめであることに配偶者が不満を抱き浮気に走る可能性もなくはないだろう。しかし旦那さんも同じような比率に見受けられるひかりの場合、円満な家庭を家族三人で美しいレースを編み上げるかのごとく繊細に、そして綱引きの綱のように強固に紡いでいくことが可能だろう。彼女の家庭のような安定した人類の営みを眺めている時、私はそれだけで幸福な気持ちになれる。  
 和香は仕事4家庭2恋愛4といった塩梅だろうか。家庭を顧みないタイプではないが、恋愛に対する攻めの姿勢は崩さない。恋愛指数が高めであるのは同じだが、私と和香の大きな違いは離婚の有無だ。彼女が子供を出産した頃に知り合い、それか らちらほらと顔を合わせそういう話も聞いてきたけれど、彼女は婚外恋愛にのめり込みしっかりと激しい不倫をするが離婚という道は絶対に選ばないのだ。それは、 仕事も収入も多い和香に代わって家事育児をほとんど担う献身的な夫がいるからこそ成立しているものかもしれないし、そういう夫だからこそ不倫相手に現を抜かしても、和香はホームに帰ることができるのかもしれない。  
 もちろん一概には分けられない比率、バランスではあるものの、ほとんどの女性は大抵話しただけで「家庭寄り」か「恋愛寄り」か分かる。たまに家庭寄りの女性 が、一つの出会いによって一瞬にして恋愛寄りに変貌を遂げることはあるが、その逆は見たことがない。恋愛への衝動は、一方通行、そして行き止まりなのだ。

目次

第1話 生牡蠣とどん底(公開中)
第2話 小さく肥えた羊
第3話 レモパワコロナバーガー
第4話 自戒三種盛り
第5話 ラストオーダー
第6話 ハンプティダンプリング
第7話 プルポとタコス
第8話 ナイトタイムトラベル
第9話 ライク ア タコス
第10話 網の上のホルモン
第11話 エビのミソはレバー
第12話 レモンの処遇
第13話 肉塊を吸った白インゲン
第14話 ゾンビが消えた街のガウディとマルゲリータ
第15話 あずきのない白くま
第16話 サーバーから溢れる慢心と郷愁
第17話 闇に蠢く愛おしい生き物の破片
第18話 渾然一体のバナナリーフ
第19話 ベースのカレーとsupernovaと

紹介されました

オーディオブック配信

本書『デクリネゾン』がオーディオブックになりました。金原ひとみさん作品初の音声化です。 人気声優の水沢史絵さんが全編を朗読し、オトバンク「audiobook.jp」にて、9月28日より配信を開始しました。 "聴く読書"未体験のかた、この機会にぜひ。

購入する

金原ひとみ『デクリネゾン 』
2022年8月26日(金)発売
定価:1,980円(10%税込)
発行:ホーム社/発売:集英社

体裁:四六判ハードカバー/本文352P

ISBN:978-4-8342-5361-0
装丁:川名潤
初出:「HB」2020年2月〜2021年11月
電子版:同時発売

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著者プロフィール

金原ひとみ(かねはら・ひとみ)
1983年東京生まれ。2003年『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞を受賞。04年、同作で第130回芥川賞を受賞。ベストセラーとなり、各国で翻訳出版される。10年『TRIP TRAP』で第27回織田作之助賞を受賞。12年『マザーズ』で第22回Bunkamuraドゥマゴ 文学賞を受賞。20年『アタラクシア』で第5回渡辺淳一文学賞を受賞。21年『アンソーシャル ディスタンス』で第57回谷崎潤一郎賞を受賞。他『パリの砂漠、東京の蜃気楼』、『ミーツ・ザ・ワールド』等がある。

既刊紹介

パリの砂漠、東京の蜃気楼

幼い娘たちと始めたパリでの母子生活。突然の帰国、夫との断絶の中、フェスと仕事に追われる東京の混迷する日々……。生きることの孤独と苦悩を綴った著者初のエッセイ集。

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