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シリーズ2作目という困難(あるいは「本は見た目が9割」か?) ナカムラクニオ

ゼロから1冊の本が生まれるまでのプロセスを、著者のナカムラさんが実験的に日記で公開していきます。
[金曜日更新]

ナカムラクニオ


 2022年の早春。ホーム社の編集者Tさんが6次元にやってきた。『こじらせ美術館』第2弾の出版プロジェクトはここから始まった。

『こじらせ美術館』は、芸術家のこじらせた人生から作品を読み解くと……という本だ。第2弾はこれをさらに発展させて、テーマを「恋愛」にすることに。恋愛は、いつの時代も芸術家にとっての絵の具。これはさらに面白いものができそう。タイトルを仮に『こじらせ美術館〈恋愛編〉』として、さっそく準備を進めることになった。発売日は、第1弾の本からちょうど2年後、2023年5月を目指す。

 1冊の本ができるまでには、たくさんのボツ案やラフや編集者とのやりとり、そして紆余曲折があるものだ。そんなわけで、これから何回かにわたって、この本ができるまでのあれこれを書いていこうと思う。

 まずは、全体の構成をどうするかTさんと打ち合わせをする。しかし正直なところ、「2作目って、難しいな」と思っていた。なぜかというと、映画などは2作目に苦戦することが多いからだ。『ロッキー2』に『スピード2』。『ジョーズ』も、『ジョーズ2』『ジョーズ3』『ジョーズ4 復讐編』と続くたびに、どうしたって、1作目のような衝撃はなくなっていく。これは、まずい……。

 いや、ちょっと待て。『エイリアン2』『スター・ウォーズ エピソード5 帝国の逆襲』『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』『トイ・ストーリー2』『ターミネーター2』などは、1作目を上回る面白さだった。それに『猿の惑星』シリーズがある。そうだ、これだ。

 1作目の続編かと思いきや、違うコンセプトで攻めればいいのだ。『こじらせ美術館』→『こじらせ恋愛美術館』→『こじらせ絶筆美術館』→『こじらせニッポン美術館』といったように進化し、展開していく。この作戦しかない!

 そんなことを考えていると、Tさんから表紙のラフが送られてきた。キキとフジタが夜のパリで輝いている。さっそく、表紙案の第一稿を描いてみた。昔、「本は見た目が9割」と言われたことがある。もちろん内容が一番大切なのだが、まずは手に取ってもらわなければ始まらない。そういう意味で「見た目も大事」なのだ。

 うーむ。まだ、何か足りない気がする。

 こういうときは画家の言葉にヒントを探そう、美術の本なのだし。そうだ、レオナルド・ダ・ヴィンチが「優れた画家はふたつのものを描く。人と人の心の動きである」と言っていた。これかもしれない。「人の心の動き」が足りない気がする。まだまだ、完成までの道のりは長い……。

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【「こじらせ恋愛美術館」の本づくり日記】
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