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横道誠『なぜスナフキンは旅をし、ミイは他人を気にせず、ムーミン一家は水辺を好むのか』9月26日(木)発売!! 発達障害当事者の観点から読み解いた全く新しいムーミン評論


この本について

自分勝手で、てんでバラバラなのに、ムーミン谷ではみんなが仲よく暮らしているのはなぜなのか。
発達障害(自閉スペクトラム症、注意欠如多動症)と診断された文学研究者の著者には、ムーミン・シリーズのキャラクターの多くに「ニューロマイノリティ(脳の少数派)」の特性が備わっていると感じられ、それが独特の世界観と調和につながるという。
著者は、自閉スペクトラム症の自助グループに初めて参加した時、「ここはムーミン谷だ!」と驚いたという。またグループには、ムーミン・シリーズのキャラクターに共振する人がとても多い。
はみ出している人のために書かれたというムーミンシリーズの新たな魅力を見出し、ムーミン谷のように、誰もが住み良い社会をつくるヒントに満ちた1冊!

トーベ・ヤンソンの才能の豊かさ、作品の深さがよくわかる!

たとえば、収集癖のあるヘムレンさん、ガラクタが大好きなスニフにはこだわりが強い自閉スペクトラム症の特徴があり、冒険をしたいムーミン・パパにはADHD(注意欠如多動症)の特性がある。そして孤独を愛するスナフキンは必ず旅に出てしまう。
また、美しい自然描写が多いのは、他人とは共振しづらい自閉スペクトラム症の人々が、自然には共振しやすいからではないか。水辺の描写が非常に多いことも特徴的だ。
本書を読めば、自閉スペクトラム症的世界観が、どんなに豊かであるかがよくわかる。また互いに自由や孤独を認め合う環境があれば、少数派である彼らも安心して才能を発揮することができることも。
1914年生まれのトーベ・ヤンソンが描いた脳の多様性の宝庫であるムーミン・シリーズと、多様性を認め合う社会のすばらしさ。作品の奥深さ、トーベ・ヤンソンの才能の豊かさがより多面的に理解できる1冊。

目次

1 ムーミン誕生!
作品の背景とシリーズの前提
トーベの家族と生いたち/ムーミンの誕生/恋人たち
ムーミン・シリーズのキャラクターは何者か?
2 シリーズ初期
『小さなトロールと大きな洪水』
大小の対比の理由/注意欠如多動症とムーミンパパの放浪癖
『ムーミン谷の彗星』
8月7日の意味/同調、協働しないキャラクターたち
「愛すべきおバカさん」スニフ/「一軍女子」スノークのおじょうさん
水への親近感/反復されるモティーフ
『たのしいムーミン一家』
自然風景や収集品への同調/秀逸なシュール表現
怪奇趣味と分身の二乗/収集癖とミニマリズム
3 シリーズ中期
『ムーミンパパの思い出』
スナフキンのパパとスニフのパパ/ジュール・ヴェルヌへのオマージュ
ADHDの冒険家気質/パートナー同士の外見を似せて描いた理由 
海に惹かれるムーミン特有の性質
『ムーミン谷の夏まつり』
マンガ版が及ぼした影響/芸術家や学者たちのコミュニティとムーミン谷
フェミニティあふれるヒロイン
24人の子どもの世話をし、禁止の立て札を引き抜くスナフキン
自然描写と多幸感/トーベの仕掛け
『ムーミン谷の冬』
造語癖/トゥーティッキとトゥーリッキ
過酷な冬の描写とトーベの精神的風景
ニューロマイノリティ的特性のある振るまい/「パリピ」的ヘムレンさん
メタフィクションへの志向/スノークのおじょうさんへの関心の変化 
4 シリーズ後期
『ムーミン谷の仲間たち』
写実的でサイコホラー的になった絵柄/自閉していられることの楽しさ 
じぶんの不安に形を与えることで生まれる安心感
不安感から自由になったフィリフヨンカ
スナフキンのとった解決策/感覚過敏という特性/家族との葛藤の清算
ニョロニョロの生態/スニフとスナフキンの共通点
とんちんかんのかわいらしさ
『ムーミンパパ海へいく』
父権性に対する問題提起/高まる自閉性/家父長的権威と自閉性
ムーミンママの変化/ムーミンの思春期とうみうま
レズビアン・ラブのイメージ/モランとモラル
トーベが愛読した精神分析家の著書
『ムーミン谷の十一月』
ムーミン一家不在の最終作/トロールは厚かましい上流階級
ニューロマジョリティ的性質漂う作品/晩秋の自然描写
水と親しむキャラクターたち/一緒にいてもひとりきりになれる
ムーミン谷の原型でスナフキンのモデルに出会う
コラム
「ぴったりの居場所がない人のために」 畑中麻紀
5 補足的視点
ムーミン絵本 
仕掛け絵本の魅力/マティスを思わせる鮮烈な色彩感覚
典型的なタイプの読者が登場
ムーミン・コミックス
2000万人の読者/モンティ・パイソンのような魅力の旧訳版
ムーミン・シリーズとのモティーフの重なり
絵画、小説、エッセイ
⾃閉的創作法とソウルメイト問題/収集癖とキャラクター・ビジネス
ホラー風味と色彩へのこだわり/ムーミン谷とムーミン屋敷の原型
叔父たちとへムルたち/自然風景の描写
コラム
「大人のテーマが描かれている(ようにぼくには思える) ムーミン・シリーズ」
二村ヒトシ

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横道誠『なぜスナフキンは旅をし、ミイは他人を気にせず、ムーミン一家は水辺を好むのか』
2024年9月26日(木)発売
定価:1,870円(税込)
体裁:192ページ、四六判 ソフトカバー
発行:ホーム社 発売:集英社
ISBN 978-4-8342-5389-4
装丁:佐藤亜沙美(サトウサンカイ)
装画:HOHOEMI

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著者プロフィール

横道誠(よこみち・まこと)
京都府立大学文学部准教授。文学博士。専門は文学・当事者研究。1979年、大阪府生まれ。40歳で自閉スペクトラム症、ADHDと診断され、発達障害当事者自助グループ活動も精力的に行う。自助グループで「ここはムーミン谷だ!」と思ったのが本書執筆のきっかけとなった。
単著に『みんな水の中』(医学書院)、『創作者の体感世界』(光文社新書)、『アダルトチルドレンの教科書』(晶文社)など。共著に『酒をやめられない文学研究者とタバコをやめられない精神科医が本気で語り明かした依存症の話』(太田出版)、編著に『信仰から解放されない子どもたち』(明石書店)など。単著、共著、編著を合わせると2021年4月のデビューから24年9月までに22冊を上梓。

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