村山由佳 もみじの言いぶん 第5話「わからせる」
腹立った時はな。無理に我慢したらあかん。
遠慮して、言いたいこと飲みこんで、おなかに溜めといたところで、あとから大爆発すんねやったらおんなじこっちゃろ? それやったら、ふだんから小爆発でガス抜きしといたほうがなんぼかマシや。
大事なことはな、「今うちは怒ってんねんで!」いう事実と、「こっから先は絶対譲ったげへんで!」いう境界線を、いやっちゅうほど相手に思い知らせたるこっちゃ。
言うてもわからんようなら、わかるまで断固として口きいたれへん。背中向けて、呼ばれても無視し続けるんや。ほんで、さんざ反省さして、土下座で涙ながらに謝らしといてから、しゃあなしで許したんねん。お詫びのしるしに一晩じゅう腕枕さしてな。
ま、そんくらいお灸すえたったら、相手も懲(こ)りて、おんなじ間違いを二度とは繰り返さんようになるやろ。
何ごとも最初が肝腎や。〈猫と下僕〉も、〈女と男〉も。
ちょお、かーちゃん、聞いとる? あんたに言うてんねん。
※本連載は2019年3月に『もみじの言いぶん』として書籍化されました。
※この記事は、2018年9月4日にホーム社の読み物サイトHBで公開したものです。