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パフェ界(ぬま)への第一歩|斧屋「パフェが一番エラい。」第2話

本連載が書籍化します。『パフェが一番エラい。』2021年8月26日発売

 パフェがブームである。
 飲食物を提供する八百万(やおよろず)のお店に、パフェはある。食べようと思えば、いつでもどこでもパフェが食べられる、とは言い過ぎだが、気をつけて街を歩くと(ネット上を散策すると)、思いのほかパフェは遍在している。
 レストラン、喫茶店(カフェ)、フルーツパーラー、甘味処、洋菓子店、コンビニ、ジェラート屋さん、デパ地下の洋菓子店、カラオケ、居酒屋、デパートの催事場でやっている物産展……。サイズも中身も値段もいろいろなパフェが溢(あふ)れている(もちろんここまでは、一定の規模の都市圏の話。パフェの地域差のお話はまた別の機会に)。

 では、「パフェを食べてみようかな」と思った時に、どこのどんなパフェから始めればよいだろうか。パフェ入門になりそうなパフェとはなんだろう。
 やはり、比較的気楽に楽しめるところというと、ファミリーレストランである。街の喫茶店でパフェをやっているところがあれば、そこもいいだろう。そして、もし季節限定のパフェが出ているなら、それを食べてみるのがよい。

 具体例を挙げるなら、なんといってもロイヤルホストの季節限定のパフェである(無い地域の方、すまぬ)。パフェというと、甘過ぎるとか多過ぎるとかで、最後まで楽しめなかったという幼少期のトラウマを抱えている諸氏も多いだろう。そういったイメージを覆(くつがえ)してくれるようなパフェが食べられること請け合いだ。実際、私は5年前に初めて「苺(いちご)のブリュレパフェ」を食べたとき、あまりのおいしさ、構成バランスのよさに「ファミレス史上最高のパフェ」とツイートしたのだった。ちなみに今年の季節限定パフェはどれも縦長のグラスの飲み口部分をクレームブリュレでおおい、中には季節の素材とアイスクリームが連なる大満足の構成になっている。おススメです。

 さて、パフェ界(ぬま)(※注1)に入門して「パフェってすばらしい」と思えたら(絶対思え)、次に少し値の張るパフェにチャレンジしてみてほしい。首都圏ならば、タカノフルーツパーラーとか資生堂パーラーとかの老舗(しにせ)のパフェや、洋菓子店のイートインで食べられるパフェを食べてみる。価格は1000円台から、高めのもので2000円を超えるだろう。食べ物だと思うと高いが、「パフェは食べ物ではない」のだから問題ない。映画を一本観る気持ちで食べてみましょう。

 そして「パフェってすごい」と思えたら(是が非でも思え)、次により限定性の高い予約制または数量限定のパフェを見つけてトライしてほしい。ここで具体例は出さないことにするが(その情報を自分で見つけること自体も楽しみの一つなのだ)、数日間だけ提供されるパフェや、完全予約制のお店もある。価格は2000円を超えるものが多くなるだろう。場合によっては3000円台になるものもあるが、問題ない。「パフェは食べ物ではない」のだから問題ない。舞台やコンサートを観る気持ちで食べてみましょう。

 ここまで来て「パフェってすさまじい」と思えたら(何が何でも思え)、値段も交通費も気にせずに、日本全国の心惹(ひ)かれるパフェに会いに行けばいい。旅行気分でパフェを探訪するのです。

 ……ちょっと先走りました。思いが溢れすぎました。パフェにそこまでの魅力があるのかな、と思われる方へ、次回からはパフェの特長、他にはない魅力をお伝えしていきます。

※注1:ぬま=沼。ネットスラングで、特定の趣味の世界にどっぷりハマっていることを意味する。

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▲ブリュレの扉を叩いたら、もう後戻りはできない。ロイヤルホストの「苺のブリュレパフェ

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連載【パフェが一番エラい。】
毎月第2・4木曜日更新

斧屋(おのや)
パフェ評論家、ライター。東京大学文学部卒業。パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベント、時々テレビなどで活動中。著書に『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)がある。
Twitter:@onoyax

※この記事の初出はHBの旧サイトです(2019年11月14日)。

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