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村山由佳 もみじの言いぶん 第2話「ずっと一緒」

大反響のうちに連載を終了した「ねこいき」こと「猫がいなけりゃ息もできない」。中でも特に多くの読者から愛され、惜しまれつつ世を去った〈もみじ〉の視点で贈るフォトエッセイ。もみちゃん——あの時、そして今この時、あなたは何を思っていたの?
※本連載は2019年3月に『もみじの言いぶん』として書籍化されました。

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 うちのかーちゃんな。言うたら何やけど、アカンタレやねん。うちがそばにおらんようなってすぐの頃なんか、べそべそ、じめじめ、ほんま鬱陶(うっとう)しかってん。
 皆さん、知っとる? あのボトル型のネックレス。中に、〈これってもしかして天使の骨やないん?〉いうくらい神々(こうごう)しいうちの骨を納めたあのネックレス。
 ガラスやし、あの女のこっちゃからカクジツに落として割るやろ? ふだん家におる間は、危なかしゅうて身に着けられへん。
 せやけど、な、これやったら心配要らんのんちゃう? 内側の窪みに大事なもん入れて、樹脂で固められるようになってんねんて。
 銀の指輪、買(こ)うたったんはとーちゃん。
 かーちゃんはそこに、うちの奥歯のちっちゃいかけらを入れよった。
 これでずっと一緒やん。ずぅーっと。
 ほんま鬱陶しゅうてかなんわ。

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※本連載は2019年3月に『もみじの言いぶん』として書籍化されました。

村山由佳(むらやま・ゆか)
1964年東京都生まれ、軽井沢在住。立教大学卒業。1993年『天使の卵―エンジェルス・エッグ―』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞を受賞。2009年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞を受賞。エッセイに『晴れ ときどき猫背』など、近著に『嘘 Love Lies』『風は西から』『ミルク・アンド・ハニー』『燃える波』などがある。

※この記事は、2018年8月24日にホーム社の読み物サイトHBで公開したものです。

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