村山由佳 もみじの言いぶん 第2話「ずっと一緒」
うちのかーちゃんな。言うたら何やけど、アカンタレやねん。うちがそばにおらんようなってすぐの頃なんか、べそべそ、じめじめ、ほんま鬱陶(うっとう)しかってん。
皆さん、知っとる? あのボトル型のネックレス。中に、〈これってもしかして天使の骨やないん?〉いうくらい神々(こうごう)しいうちの骨を納めたあのネックレス。
ガラスやし、あの女のこっちゃからカクジツに落として割るやろ? ふだん家におる間は、危なかしゅうて身に着けられへん。
せやけど、な、これやったら心配要らんのんちゃう? 内側の窪みに大事なもん入れて、樹脂で固められるようになってんねんて。
銀の指輪、買(こ)うたったんはとーちゃん。
かーちゃんはそこに、うちの奥歯のちっちゃいかけらを入れよった。
これでずっと一緒やん。ずぅーっと。
ほんま鬱陶しゅうてかなんわ。
※本連載は2019年3月に『もみじの言いぶん』として書籍化されました。
※この記事は、2018年8月24日にホーム社の読み物サイトHBで公開したものです。