冷蔵庫の卵 千早茜「ときどき わるい食べもの」
[不定期連載 はじめから読む]
illustration:北澤平祐
直木賞を受賞してから四ヶ月が経った。そのあいだ、幾度となく「忙しいでしょう」と言われた。「受賞直後の一週間の記憶が飛ぶ」とか「受賞すると必ず体を壊す」とか、まことしやかに恐怖の忙しさが語られてきた賞だ。なんの謙遜も必要ないだろうと「はい、ものすごく」と力を込めて言ってきたが、だんだんその度合いを正確に伝えたくなってきた。
リモートでミーティングする恋人の様子を眺めていたら、チーム内で一から五の数字を