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パフェのA-B-A構造|斧屋「パフェが一番エラい。」第6話

 パフェには順番がある。ここが、他のスイーツと圧倒的に違う。

 パフェを横から見ると、層になっている。
 背の高いグラスに、地層のような積み重なりがある。
 それら全体を、一時(いちどき)に口に入れることは普通ない。
 自然に食べ進めれば、おおよそ上の層から順番に口の中に入っていくことになる。
 この「順番」がパフェにとって重要な意味を持っている。

 この順番、大まかには三層構造として捉えるのがいい。
 私はグラスの上に盛られている部分を「表層」、グラス内部を「中層」、一番下の食べ終わりに差し掛かる部分を「深層」と呼んでいる(※注1)。

 表層は、立体的に飾られる、パフェにおいて最も目立つ花の部分である。ここにパフェのテーマも表れる。中層はグラス内に層を作っていく部分で、アイスクリームやムース、サクサクの食感素材など、バリエーションは多岐にわたる。深層はパフェの食べ終わりの余韻に関わる部分で、ジュレ(ゼリー)やソースで終わる場合が多い。

 第一印象は表層で決まるため、表層には力が入れられていることが多いが、パフェビギナーの方は、ぜひ中層から深層に注目するようにしてほしい。メニュー写真でも、あまりに上の角度から撮られたパフェには要注意である。中層、深層がよく見えないということは、そこには自信がないに違いない。

 さて、このように三層構造として捉えた上で、その構造によってどのような展開が待ちかまえているかを、物語のように楽しんでいくわけである。ただし、物語としてなじみの深い起承転結や序破急(じよはきゆう)とは異なり、パフェの場合、一番最初がクライマックスという構成を取りやすい。

 パフェの定番の構成は、盛り上がって、別の展開をはさんで、最後にもう一度盛り上がって終わるという、私が「A-B-A構造」と呼んでいるものである。
 典型例として、タカノフルーツパーラー新宿本店の「静岡県産マスクメロンパフェ」を挙げたい。メロン果肉を存分に楽しんだ後で、ソフトクリームの中層でメロンのことを忘れさせ、そして深層でもう一度メロンが登場する。ソフトクリームという、メロンを引き立てる名脇役が中層に配置されることで、最後にメロンと再会する喜びもひとしおである。

 ここまで読んで、「いや待て、自分はパフェの順番を割と無視して、少し掘っては前の層に戻り、という食べ方をしているんだが……」という人がいるかもしれない。実際にこういった食べ方のほうがおいしいと言う人も多い。これがパフェの面白いところで、我々は行きつ戻りつしながら食べることもできる。

 これを私は「RPG(ロールプレイングゲーム)」のたとえで話すのだが、最終的にゴール(食べ終わり)に行きつくことができれば、そこまでのプロセスは一直線にゴールを目指すもよし、行きつ戻りつして景色を楽しみながらゆっくり進むもよしなのである。物語の大きな構成はそれとして存在し、一方で食べ手はその中で可能な限りおいしく食べられそうな手順を見出(みいだ)して楽しんでいく。そんな寛大な物語がパフェにはある。


※注1:「中層」と「深層」の境界の判断は難しいものも多いし、その解釈は分かれることもあるだろう。

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▲グラスの底で、また会えたね。タカノフルーツパーラー新宿本店の「静岡県産マスクメロンパフェ」

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斧屋(おのや)
パフェ評論家、ライター。東京大学文学部卒業。パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベント、時々テレビなどで活動中。著書に『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)がある。
Twitter @onoyax

※この記事は、2020年1月9日にホーム社の読み物サイトHBで公開したものです。

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