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各地のパフェに会いに行く|斧屋「パフェが一番エラい。」第27話

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 パフェは日本で独自に発展した文化である。では、パフェに地域色はあるのか。
 パフェは食事ではないため、日常的に家庭で食べられてきたものではない。そもそも家で作るものではなく(注1)、たまに外食で食べるくらいであるため、「ご当地グルメ」になりづらいという側面がある。しかし、#26でも紹介した札幌の「シメパフェ」以外にも、最近は各地に地域特有のパフェの登場とか、パフェの観光資源化の動きが見られるようになってきたので、代表的な例を紹介しよう。

 北陸地方はなぜかアイスクリームの消費が盛んな地域であり、パフェを提供するお店も多い印象だ。加賀温泉では、2016年から毎年リニューアルを重ねる「加賀パフェ」というパフェのブランド化の取り組みがある(注2)。「地産地消5層パフェ」をルールとし、加賀市産の加賀九谷野菜や献上加賀棒茶、九谷焼の受け皿を使用するなど、地元の名産品を用いたパフェを加賀温泉周辺の複数店舗で提供している。
 京都は抹茶パフェの印象が強いかもしれないが、喫茶店文化が古くからあり、パフェのバリエーションが多彩な地域である。昨年に引き続きこの秋も「京都パフェコレクション」が開催されている。パフェのスタンプラリーで、回った店舗数に応じてノベルティがもらえるイベントだ。昨年は「11月にパフェのイベント?」と驚いたが、たくさんの人がパフェのお店を回って大いに盛り上がった(注3)。個人的には季節を問わずみんなパフェを食べ回るようになったのだなあと、パフェ文化の定着を実感した次第である。
 岡山は2009年より、「フルーツパフェの街おかやま」というキャッチコピーのもと、岡山市内でパフェを提供するお店のエリアマップを作成し、岡山産のフルーツをパフェという形で気軽に食べてもらおうという取り組みを行っている。2012年からは毎年8月9日・10日を「おかやま白桃パフェDays」と銘打ち、岡山の白桃とぶどうを使用したオリジナルの限定パフェを東京と大阪の飲食店で提供するイベントも行ってきた(注4)。

 九州は果物を大胆に使用した「フルーツパーラー系」のお店が多い印象だが、中でも注目すべきは、福岡の薬院にある「プリンス オブ ザ フルーツ」である。主に西日本の貴重で希少な果物を使用した高級フルーツパフェの専門店だ。
 11月初めにいただいたのは、〝秋三昧パフェ〟という梨・柿・栗を使った贅沢な一品。糖度14度以上の長野県産〝南水梨(なんすいなし)〟、柿とは思えない甘さの鳥取県産〝西条柿〟、山口県産〝厚保栗(あつくり)〟はブランデー香るマロングラッセに。
「梨、柿、栗の順にお召し上がりください」
 お店の方から推奨するおいしい食べ方が教授される(これを「よい命令」と呼んでいる。「よい命令」が下ると、内心興奮する)。味の薄いものから濃いものへという順番にすることで、すべての素材を存分に味わうことができるのだ。それぞれのフルーツはしっかりと甘いが、同時にすっきりとしていて、ほうじ茶とミルクのジェラートも引き立て役としての立場をわきまえている。深層で梨や栗と再会し、食べ終わりに至るまで、秋という季節の豊饒(ほうじょう)さと癒しに触れることができるパフェである。

 九州は他にも、メニューが豊富で100種類以上のパフェがあるお店や、巨大パフェで有名なお店も多く、注目すべきエリアと言える(注5)。
 私のようにパフェ目的の「遠征」(注6)でなくても、全国各地に行く用事がある際には、パフェのお店も探訪してみるといいだろう。
 用事の合間にパフェを食べる計画を立てる。それがいずれ、パフェの合間に用事を挟むようになり、果てはパフェ目的で遠出をするようになる。そうなれば、もう完璧である。

※注1:最近「うちパフェ」がようやくブームの兆しを見せているように思えるが、いまだ一般的ではない。
※注2:詳細は公式ホームページを参照のこと。http://www.kagaparfait.com
※注3:昨年私は一日で5店舗を回り、特製のトートバックをもらってきた。一日で複数のパフェを食べまわることを「パフェはしご」と呼んでいるが、一日でたくさん回る人は他にも結構いるようだ。
※注4:今年は残念ながらコロナ禍の影響で中止となった。
※注5:「ピノキオパフェ」、「三匹の子豚パフェ」など、おとぎ話の世界観を表現した「キャラクターパフェ」で知られる福岡・太宰府の「ノエルの樹」。メニュー数が多いことで知られる佐賀の「パフェ屋そらり」、「うふふ」、鳥栖の「カフェ ド ブルー」、大分の「ランズ カフェ」。最大1.2メートルの「タワーパフェ」で知られる長崎の「カフェ オリンピック」などが有名である。なお、沖縄県を私は長らく「パフェ不毛の地」と捉えていたが、この秋にパフェ専門店が相次いでオープンした。
※注6:オタク界隈ではイベント参加のために長距離移動をすることを「遠征」と言う。首都圏在住者であれば、関東の外へ出るのが「遠征」というイメージだろう。

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▲プリンス オブ ザ フルーツ「〝秋三昧パフェ〟」
おいしくなるなら、どんどん命令してください。

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連載【パフェが一番エラい。】
毎月第2・4木曜日更新

斧屋(おのや)
パフェ評論家、ライター。東京大学文学部卒業。パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベント、時々テレビなどで活動中。著書に『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)がある。
Twitter:@onoyax

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