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いつでも・どこでも・だれでもパフェ|斧屋「パフェが一番エラい。」第15話

 お店の人が作ったパフェを、お店で食べるという「通常」のパフェ体験をすることが難しくなっている。そこで、今回は「通常」ではないパフェのあり方について考えたい。「どこで食べる」「誰が作る」という基準によって、パフェを分類してみよう(下表参照)。

Screenshot_2020-07-01 15 いつでも・どこでも・だれでもパフェ - 斧屋「パフェが一番エラい。」 HB(1)

 第4話でも書いたが、パフェはすぐに食べられるという条件の下でこそ、おいしく美しく輝ける。テイクアウトのパフェは、使い捨ての容器であることや、一定の時間に耐えなくてはならないという条件が加わるため、当然お店で食べるパフェに比べて表現の幅が狭まってしまう。しかし、店内飲食の休業を強いられる風潮の中、そんなことは言っていられない状況である。
 テイクアウトのパフェ自体は以前からある。ただし、それは家で食べる「持ち帰りパフェ」とほぼ同義だった。しかしここ数年流行ってきているのが、お店で提供されたパフェをそのまま外で食べる「食べ歩きパフェ」である。「持ち帰りパフェ」と区別のないものもあるが、「食べ歩きパフェ」にはアイスなど時間に制約のある素材も入れられるため、お店で食べるパフェと近いものにできる。また、昨年夏はカキ氷と合体した「パフェ氷」とか、スムージーやタピオカと融合した「飲むパフェ」が目立ったが、それらは「食べ歩きパフェ」として提供されるケースも多かった。
 こうしたトレンドが、今回のやむにやまれぬ事情と相まってテイクアウトの大きな流れを生んでいる。その中から、新たなパフェ表現が生まれてくる可能性もあるだろう。

 さて、一方でパフェを客側(食べ手)が作るというケースがある。たとえば、「オーダーメイドパフェ」は、客がパフェの中身となる素材を選んで、自分だけの組み合わせのパフェを食べられるというものである。それでも多くの場合パフェ自体の組み立てはお店の人が行うのであるが、客がパフェを作れるという試みもある。
 新宿歌舞伎町の「ロイトシロ」の4月後半の限定パフェは、中身を選んで、希望すれば自分で組み立てることができた。私は、クリームはピスタチオとキャラメル、フルーツはいちごとオレンジ、アイスはオレンジヨーグルトとホワイトチョコミント、ソースはオレンジジュレを選択。パレット皿に並べられたトッピングを空のグラスに飾り付けていく。
「おうちパフェ」と比べると、各パーツはすべてパフェ用に作られたものであるから、どう選んでどう作ってもおいしいであろうという圧倒的な信頼感がある。それでいて、自分で中身を選べる楽しさと、どのような順番がベストか、ドキドキしながら組み上げる面白さがある。それが正解だったかどうかは、食べ進めながら答え合わせをする(フィヤンティーヌを入れる場所は間違いだったかもしれない……)。心に傷を残さない失敗は、時にエンタメになる。
 他に飲食店で客がパフェを作る事例として、ファミリーレストランで「パフェバー」と呼ばれるものがあったり、カフェの親子参加型ワークショップで、「パフェを作ろう」的な催しが開かれたりすることがある。

 さて、家での楽しい過ごし方として、#14でも述べたように「おうちパフェ」が盛り上がりを見せている。そんな中、お店がパフェの材料一式を提供する「おうちパフェセット」の販売が登場した。 スーパーに売っている、ニンジン・じゃがいも・たまねぎの「カレーセット」のように、パフェの全パーツをセットで売り、家で作って食べてもらおうというものである。
 札幌の「パフェ、珈琲、酒、佐藤」では、定番の人気メニューである「塩キャラメルとピスタチオ」の2人分の材料と容器を「おうちでシメパフェセット」として販売した(宅配サービスも行った)。YouTubeで作り方の動画も公開しており、お店のパフェを家で気軽に楽しめる面白い試みだ。

「通常」のパフェでなくても、これだけパフェにはポテンシャルがある。だからといってお店でプロが作るパフェの代わりにはならないのだが、パフェは誰でも作ることができ、いつでもどこでも食べることができる。そんなパフェ界の広がりについては強調しておきたい。

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▲ロイトシロ「真っ白なキャンバスパフェ」
あれ、作るの意外と上手じゃない?

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斧屋(おのや)
パフェ評論家、ライター。東京大学文学部卒業。パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベント、時々テレビなどで活動中。著書に『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)がある。
Twitter @onoyax

※この記事は、2020年5月28日にホーム社の読み物サイトHBで公開したものです。

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