パフェは食べ物ではありません|斧屋「パフェが一番エラい。」第1話
本連載が書籍化します。『パフェが一番エラい。』2021年8月26日発売
「パフェは究極のエンターテインメント」という話題のパフェ評論家、初の連載コラム! パフェ初心者から上級者まで、魅惑のパフェ界にどうぞどっぷりおハマりください。
メインビジュアル用パフェ提供:フルーツパーラーゴトー
斧屋(おのや)といいます。パフェ評論家をやっています。
あ、カフェじゃないです。パフェです。
はい、そうです。パフェ。
そう。背の高いグラスに盛られたデザートの、あの、パフェです。
最近食べてませんか?……そうですか。
その、パフェの、評論家です。一応商標登録もしています。
だから、いまのところ唯一のパフェ評論家です。
パフェって、食べたことありますよね。
食べたことない人、あんまりいないと思いますが、食べたことなくても、見たこと、ありますよね。パフェ。
そのパフェの評論活動をしています。……へんなの。
パフェ評論家はふだん何をやっているのか。
東京を中心に、おいしいパフェや楽しいパフェを食べ歩いて、その魅力をSNSやラジオで発信することがメインの活動です。要は「パフェの応援団長」みたいなことをやっています。そんなわけで、毎年365本前後のパフェを食べています。1日1本ペースですね。そんなに食べるパフェがあるのか、おいしいパフェがあるのか、飽きないのか、と思われるかもしれません。飽きないです。そして、魅力的なパフェが食べきれないほどたくさんあるのです。実は今、パフェブームなのです。
パフェって、不思議ですね。
読者のみなさんがパフェを最近食べていないとしたら、それは、パフェが「中途半端」な存在だからかもしれません。
食事ではないけど、デザートにしては量が多過ぎる。
だから、一日の中でいつ食べていいのかよく分からない。そんな奇妙な存在です。朝でもない、昼でもない、ましてや夜ではない(本当は夜こそ面白いのだけど)。
語源はフランス語の「parfait(=完璧)」から来ているのに、結局のところ日本独自の文化になってしまっているパフェ。
パフェって何? と問われると、みんなイメージは思い描けるのに、完璧には説明できない。
「何が入ってたらパフェなの? パフェから中身をどんどん抜いていったら、どの瞬間からパフェじゃなくなるの?」とか、「サンデーとどう違うんですかー?」って小学生に聞かれたら、どうしましょう。
でも、そんなややこしさを吹き飛ばす魅力が、パフェにはあります。
もちろん今のパフェブームの大きなきっかけは、Instagramを中心とするネット上の画像文化にあります。パフェの見映えの美しさ、かわいさ、華やかさは、個人的には他のスイーツから頭ひとつ分にょきっと抜きん出ていると思います(パンケーキ派・かき氷派の反論はいつでも受け付けます)。でも、視覚的な側面はパフェの魅力のごく一部に過ぎません。もっと言うならば、パフェの魅力は、食文化という括(くく)りよりももっと拡張して捉えるべきと考えています。
パフェは、食べ物ではありません。
パフェは、音楽であり、映画であり、絵画であり、建築であり、文学です。
つまり、パフェは究極のエンターテインメントです。
そんなことを、この連載でお伝えしていけたらと思います。
そして、パフェ好きではなかったあなたが、いつの間にかパフェの深みにハマり込んでいたとしたら、私の思う壺です(※壺に「パフェグラス」とルビをふりたい)。
▲ビギナーから、マニアまで。楽しみ方が深化する店。東京・浅草のフルーツパーラーゴトー「本日のフルーツパフェ」
連載【パフェが一番エラい。】
毎月第2・4木曜日更新
斧屋(おのや)
パフェ評論家、ライター。東京大学文学部卒業。パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベント、時々テレビなどで活動中。著書に『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)がある。
Twitter:@onoyax
※この記事の初出はHBの旧サイトです(2019年10月24日)。