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一日を、パフェでシメる。|斧屋「パフェが一番エラい。」第26話

 そもそもお酒をほとんど飲まないので、シメにラーメンを食べたいと思う心理も分からない。だから、札幌に「シメパフェ」という言葉が登場した時に、「ラーメンじゃなくてパフェ?」という違和感よりも、「もちろんそりゃパフェの方がいいでしょ」と思う自分がいた。
 すでに札幌に広まりつつあった、夜にアイスやパフェを食べる文化。2015年に「札幌パフェ推進委員会」が「シメパフェ」という呼称を掲げて普及に乗り出したところ、ほどなくしてテレビ等マスメディアでも取り上げられて、あっという間に全国にその名が知られることとなった。
 ここ数年は首都圏、名古屋、京都、大阪、金沢、福岡といった大都市圏にもシメパフェ文化は広まり、専門店も続々と現れた。おしゃれなカフェやバーで提供されることも全く珍しくなくなっている。
「シメ」とは言うものの、「シメパフェ」とは要するに夜に食べるパフェのことで、別にお酒を飲んだあとに食べる必要はない。お酒を飲みたい人は飲めばいいし、甘いものが好きな人はパフェを食べればいい。もちろん両方楽しんでもいい。お酒が飲めない人が手持ち無沙汰になることなく夜のひとときを楽しめる方法としてもシメパフェは優れている。いまだにパフェを食べるのは女性が多めのようだが、女性からするとシメのラーメンよりもパフェの方がテンションの上がる食べ物なのだろう(カロリーの気になるラーメンを引き合いに出しておいて、パフェへの罪悪感を軽減するという心理的戦略をとることもできる)。
 シメパフェは甘すぎず重すぎず、すっきりとした味わいに仕上げてあることが多い。パフェがワイングラスやカクテルグラスで提供されることも多くなり(実際にお酒を使ったパフェも多い)、テーブルの上にお酒とパフェが一緒に並ぶ光景は自然なものになりつつある。夜景の見えるお店だったら、パフェと夜景の組み合わせは「映え」的な意味でも魅力的である。
 そんなわけで、始まってみたら「シメパフェ」は楽しいし、お店としても客を呼べる看板メニューになるポテンシャルを秘めているため、どんどん増えているのだ。

 表参道の「エンメ ワインバー」は、その名の通りワインバーだが、季節ごとの食材を使ったデセールが楽しめるお店で、はっとする構成のパフェでも知られる。パフェに合うワインを選んでもらうのも楽しそうだ(下戸の私はパフェに入るお酒の風味を楽しむことだけでも満足だ)。
「柿と和栗のモンブランなパフェⅡ」は、昨年のオープン時の第一作目をアレンジしたもの。落花生のアイス、和栗のクリーム、柿の種、ディルと柿のマリネ、緑茶とジンのジュレ、メレンゲ。お酒やハーブを使った、風味豊かでありながらもすっきりとしたパフェである。
 柿と言えばお菓子の「柿の種」、という着想から「柿の種」を砕いたものが入れてある(お酒のつまみという連想もされるだろう)が、今年は落花生のアイスまで入っている。「柿の種」と言えばピーナッツ(柿ピー)、という連想である。和歌の世界で、互いに関連する意味の語を織り込むことを「縁語」というが、それに近いものを感じさせる。もちろん大事なのは、ただ入れるという形式的な側面だけではなく、全体の調和に寄与するという内容的な側面である。
 このパフェで言えば、「柿の種」の辛みが味のアクセントとなり、「落花生」のアイスの香りがパフェを立体的な味わいへと誘(いざな)うことで、よりよく味わうための必然的構成要素として「柿の種」が立ち現れる。つまり、一見シャレや驚きを目的にして入れられたように思える「柿の種」は、このパフェをおいしくするために不可欠なパーツになっているのだ。作品としての完成度の高さがここに表れている。

 なんてすばらしいパフェだろう。このまま帰るのは名残惜しいから、シメにパフェでも頼もうか。

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▲エンメ ワインバー「柿と和栗のモンブランなパフェⅡ」
柿ピーも、パフェになるとは思うまい

【おまけ回文】夜飯でシェフ、パフェして〆るよ。

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斧屋(おのや)
パフェ評論家、ライター。東京大学文学部卒業。パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベント、時々テレビなどで活動中。著書に『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)がある。
Twitter:@onoyax
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