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ぶどうパフェのポテンシャル|斧屋「パフェが一番エラい。」第23話

 食欲の秋、パフェの秋である。
 ぶどう、いちじく、梨、栗といった旬の食材も豊富で、どこのお店のどのパフェを食べに行こうか、悩みは尽きない。中でも、ぶどうのパフェのポテンシャルについては強調しておかねばなるまい。

 近年、皮ごと食べられる種なしのぶどうが多く出回るようになったことで、ぶどうをパフェとして表現することが容易になった。果肉が柔らかくジューシーなぶどうはもともとパフェに向いたフルーツだが、皮や種の存在は、どうしてもパフェのスムーズな食べ進めを阻害する要因となる。いちいち皮を剥き、種を口から出しながら食べる、ということは見映えも悪く、できればしたくない。「皮ごと・種なし」のぶどうが増えることで、ぶどうパフェの可能性は大いに広がったと言える。以下、ぶどうパフェの特徴と魅力について見ていこう。

1.種類が豊富
 ぶどうは、大きく分けて赤系・緑系・黒系(注1)があり、その中でもいろいろな形、固さ、味、大きさのぶどうがあるため、複数の品種の果実を入れた「食べ比べパフェ」に最も適した果物である(注2)。「食べ比べパフェ」は、同じフルーツの異なる品種が少しずつ入ったパフェであり、今まで知らなかった品種と出会うこともできる、知的好奇心をくすぐられるパフェなのだ。食べ比べながら自分の好みを発見することもできるから、「自分占い」にもなる。

2.球体
 ぶどうの粒の多くは球体である。かわいい。ぶどうパフェの多くは、その球体を生かした飾り付けとなる。丸い粒をたくさん積み上げたパフェもあれば、粒の球体とアイスの大きな球体を並べることで球体のイメージを強調するパフェもある。また、桃のようにパフェグラスにかぶさるような大きさにならないため、そのままコロコロとグラスのどこにでも配置できるという構成上の強みもある。

3.加工しやすい
 フルーツパフェは、フレッシュのフルーツだけでなく、フルーツに手を加えた素材をどのように合わせていくかも腕の見せどころである(特に「パティスリー系」においては)。ぶどうはアイス・ソルベ、レーズン、ソースといった活用ができるほか、ワインを使ってより強いアクセントをつけることもできる(パフェは中層以降にジュレを入れるのが定番だが、ワインのジュレを使うことで、ぶどうのフレッシュの味わいとのコントラストをつけることができ、また香りを楽しむこともできる)。

 以上を踏まえて、「パスカル・ル・ガック東京」のぶどうパフェ「パルフェ フルーリー レザン」を見てみよう。
 使っているぶどうはフレッシュで10種以上、加工したものも合わせれば実に15~16種ものぶどうを使用している。「マイハート」というカットするとハート形になる品種など、シェフが山梨の生産者を訪ねて、150種類のぶどうの味を確かめながら選んだぶどうである。
 パフェグラスの中に、ぶどうやソルベ、アイス、チーズケーキなどの素材が球や円形のイメージの重なりとして配置されている。美しい。下が膨らんだグラスだから、グラス内部にぶどう果肉をたくさん入れることができる。これは構成上重要なことで、グラスが細長いと、果肉はどうしてもグラスの上部に飾り付けるのみの構成になりやすく、食べ進めるにつれ果肉は減っていく。「パスカル・ル・ガック東京」のパフェは逆に、食べ進めていった先にぶどう畑の楽園が待ち構えている。
 ぶどうソルベにはワイン用のぶどうとジュース用のぶどうに加え、ブラッククイーン100%のワインを使用、さらにワインビネガーを隠し味に。フレッシュのぶどうとともに、長時間オーブンで濃縮させた味わいのレーズンも入り、グラス底には「アジロンダックワインとライチのジュレ」。
 ぶどうというフルーツの長所を生かしつつ、さらにチーズケーキや「オレンジはちみつと落花生のアイス」といった強い素材もぶつけて、これがまたよく合う。合うというより、お互いに負けない。それぞれの素材の甘みや香りに包まれて、夢見心地になってしまうパフェなのだ。

 見た目よし、フレッシュで食べてもよし、手を加えてもよし。10月半ばくらいまでは、ぶどうパフェがちまたにあふれているだろう。シャインマスカット、クイーンニーナ、ルビーロマン、巨峰、ピオーネ、ナガノパープル……。
 あなたは何がお好きですか。私はナガノパープルです。

※注1:赤系の代表格は紫苑(しえん)、甲斐路など、緑系の代表格はシャインマスカット、瀬戸ジャイアンツ、マスカット・オブ・アレキサンドリアなど、黒系の代表格は巨峰、ピオーネ、ナガノパープルなど。
※注2:食べ比べとしては、他にいちごや柑橘を使ったパフェが作りやすい。

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▲パスカル・ル・ガック東京「パルフェ フルーリー レザン」
あらゆるブドウを、あらゆる手を使って。

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斧屋(おのや)
パフェ評論家、ライター。東京大学文学部卒業。パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベント、時々テレビなどで活動中。著書に『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)がある。
Twitter:@onoyax
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