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コーンフレークは悪くない|斧屋「パフェが一番エラい。」第17話

 漫才日本一を決めるM-1グランプリ、昨年の決勝。ミルクボーイがM-1史上最高得点を叩き出した「コーンフレーク」のネタが大いに話題になった。その中でパフェが登場したのをご記憶の方も多いと思う。

「パフェとかの、かさましに使われる……」「コーンフレークやないかい!」

 これが笑いになるからには、コーンフレークがパフェのかさましに使われることが聴衆の共通了解になっているというわけだ。

 日本各地に、複数人でシェアをすることを想定したジャンボパフェを提供する店がある。あるいは、一人分のパフェでも、なるべく高さを出そうと背伸びをしているパフェも多い。パフェは大きい(背が高い)方がいい、という思想はいまだ根強いように思う。そして、高さを出すための一つの解がコーンフレークによるかさましということになるのだろう。その結果、コーンフレークのボリュームで食べ疲れてしまい、また中盤以降の構成の単調さに飽きてしまい、大人になるまでに多くの人はパフェを残してしまうという経験をする(通過儀礼のようなものか)。かくして、「コーンフレーク=かさまし」という観念も強く刻まれることとなる。

 よいパフェの見分け方として、「横から見る」というのがある。それは、上ばかり見ずに、下の方を見るということでもある。底の方にコーンフレークが分厚く層を成していたら、「かさまし」だなあと思う(パフェは洗練されるにつれ、ザクザクした食感素材が目立たなくなり、適度な量に落ち着くものだ)。もう少し悪意があると、メニュー写真を斜め上から撮って、下の層がどうなっているのかが見えないものもある。
 求人広告の給与例(入社3年目で年収1000万!)のように、この世には見せたいから見せているごく一部と、見せたくないから隠されているその他多くの部分がある。コーンフレークは、できるだけ見えないところで、空間を埋めるための頭数にされやすい素材であることは間違いない。

 あらためて、パフェにおけるコーンフレークについて整理しておこう。
 パフェにコーンフレークを入れるメリットはいくつもある。食感、香ばしさ、温度変化が挙げられる。アイスやクリームなど、柔らかいものが多いパフェの中で、カリカリとした食感のアクセントとなり、香ばしさも感じられ、また冷たくなった口の中を常温に戻す役割も果たす。なかなかいいやつである。
 たとえば、渋谷と丸の内にある「ブラッスリー・ヴィロン」で提供している「キャラメル リエジョア」(※注1)。ふわふわで盛りだくさんのホイップクリーム、香ばしいアーモンドのチュイール、にがーいキャラメルアイスクリームという強いパーツと共演することで、コーンフレークのカリカリとした確かな食感と香ばしさが生きている。

 しかし、コーンフレークはパフェの構成上デメリットもある。食感や香ばしさが他の素材を負かしてしまうということがあるのだ。特にフルーツパフェを食べ進める中で、果肉とコーンフレークが同時に口に入ると、フルーツ果肉のおいしさを阻害してしまうように思う。また、コーンフレークは意外と分厚い。たくさん入っている場合、咀嚼にかなりのエネルギーを要するため、他の素材を食べる体験の邪魔になる恐れもある。

 そういうこともあってか、最近の、ことに専門店のパフェではめっきりコーンフレークを見かけなくなっている。その代わりに、もっと軽い食感の素材が入ることが多い。フィヤンティーヌ、パイ生地、グラノーラなどなどである。

 コーンフレークはそれなりにスキルもあるのに、汚れ仕事を押し付けられたばっかりに、不当な評価に甘んじている気もする。そうこうしているうちに、シュッとしたおしゃれな若手たちに居場所を奪われてしまった。
 コーンフレークは悪くない。それを使う方法に良し悪しがあるだけだ。多く入れ過ぎずに、適度な食感にとどめておけばいいのに、と思う。

 といいつつ、私はサクサクと耳にも快いフィヤンティーヌが一番好きである。すまん。

※注1:「リエジョア(liégeois)」はホイップクリームを使用した、フランスのパフェっぽいデザートである。

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▲ヴィロン渋谷店の「キャラメル リエジョア」
もふもふ、ざくざく、にがーい。

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斧屋(おのや)
パフェ評論家、ライター。東京大学文学部卒業。パフェの魅力を多くの人に伝えるために、雑誌やラジオ、トークイベント、時々テレビなどで活動中。著書に『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)がある。
Twitter @onoyax

※この記事は、2020年6月25日にホーム社の読み物サイトHBで公開したものです。

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