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北澤平祐 ぼくとねこのすれ違い交換日記 第7話「ねこはどっちに跳ぶのか/See which way the cat jumps」

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【ぼく】6月12日

 イラストレーターとしての仕事が少しずつ増えてきた。昨年末に受けた本の装画の仕事がきっかけかも。正直、装画の仕事はギャラがいいわけではないけれど、全国の書店に置かれるため、目にしてもらえる機会も多く、絵の宣伝効果は高そう。事実、その本が発売してからすぐに別の出版社からもオファーが入ったので驚いた。このまま数珠つなぎで仕事が繋がっていけば、本当にイラスト一本で食べていくのも夢じゃないかも。よし、ホワンホワン、もっと招いて招いて! ごはんも豪華になるよ!

 しかし、ホワンは最近何が気に入らないのか、逆に仕事のじゃまばかりしてくる。どうしたものか。

 仕事が増えたとはいえ、家族3人食べていくだけの稼ぎにはまだほど遠く、こかりは「出稼ぎに行ってきまーす」と言って、特許庁で派遣社員として働きはじめた。

 こかりの仕事選びの基準は明確で、その仕事に興味があるかどうかのみだ。たとえば大学生の時は、文学を専攻していたので書店員。大学卒業後は、動物好きが高じ、専門学校に入り直してからの動物病院勤務。結婚後は、ぼくがフリーランスになったので、確定申告の時期のみ募集している税務署のバイトをして、ベテラン署員に税金の裏話を根掘り葉掘り聞いていたらしい。そして、今回はテレビで見た年収数億という発明家主婦に感銘を受けて、特許庁で働くことにしたようだ。

 こかりが外に働きに行く週4日は、ぼくが主夫として、朝晩のごはんやこかりのお弁当作り、掃除洗濯、ひととおりの家事をこなす。もともと住んでいたアメリカでの大学時代はルームメイトと二人暮らしをしていたので慣れているし、皿洗いなどをしている間は頭を無にできるためか絵のアイデアをポンポン思いつくので嫌いじゃない。

 こかりが外で仕事をして、ぼくが家を守るという生活は案外性に合っているのかもしれない。しかし、ぼくがこの思いつきを冗談混じりにこかりに話すと、彼女は一瞬驚いたあと、淋しげな表情を浮かべ、「家事は私にだってできるから、とりあえずたいら君にしかできないことをがんばろうよ」と言った。


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【ミー】June 19th

 レイトリー、コカリはビーチでサーフィングでもしているのか、いつもいえにいない。タイラーはオールウェイズおえかきしてあそんでいる。このカップルは、だいじょうぶなのか?

 やつらがワークハードしないと、チープなドライフードしかたべられないので、ミーは、タイラーがあそぶのをじゃますることにした。

 まずは、おえかきをさせないようにスケッチブックのうえでレイダウン。タイラーは「シメキリがちかいんだからじゃましないでよ」と、むりやりカバーをオープンしたので、ミーはローリング・ストーンのようにころがりおちて、ウォールにぶつかった。はらがたつ。そこまでしておえかきしたいのか? リベンジにペンやイレーサーをちょいちょいとフロアにおとしたのだが、タイラーはおえかきにむちゅうできがつかなかった。

 こんどは、タイラーが、コンピューターでもおえかきをはじめたので、ミーはスクリーンのまえでスタンドして、みえなくした。すると、タイラーはわざとらしく「ふうっ」といい、マウスカーソルをメトロノームのようにライト、レフトとうごかしはじめたのだ。

 すると、こまったことがおきた。ミーのアームがかってにカーソルをフォローしてしまうのだ。ライト、レフト、ライト、レフト、とまらない。「あはは、ねこワイパーだ。スクリーンをきれいにしてくれてるの?」タイラーがミーをトイにしてあそんでいる、ひどいおとこだ。つぎに、カーソルをアップダウンにうごかすと、フォローするミーのアームをみて「こんどはリアルまねきねこだ、まねいて、まねいて!」などといって、またおおわらいした。


ねこようせいによる「ねことわざ」解説

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See which way the cat jumps
(ねこはどっちに跳ぶのか)

See which way the cat jumpsは、なりゆきを見守るとか、様子を見ようって意味らしいよ。日和見主義の人が使いそうな言葉だね、たいら君も好きそう。実際、何かに迷ったときは考えることをやめて、とりあえず寝ちゃうみたいだし。


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毎月第1・3火曜日更新
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北澤平祐(きたざわ・へいすけ)
イラストレーター。東京都在住。アメリカに16年間在住後、帰国しイラストレーターとしての活動を開始。
多数の書籍装画や、花王、東京ソラマチ、渋谷ヒカリエなどのキャンペーンビジュアル、ファミリーレストランCOCO'Sのメニューイラストや、洋菓子のフランセ、キャラメルゴーストハウス、KENZO Parfumsの商品パッケージ等、国内外の幅広い分野でイラストを提供。
オフィシャルサイトwww.hypehopewonderland.com
Twitter@nevermindpcp

※この記事は、2019年10月1日にホーム社の読み物サイトHBで公開したものです。

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HB(エイチビー)は、集英社グループの出版社・ホーム社の文芸サイトです。2017年11月にサイトを立ち上げ、2020年にnoteへ引っ越してきました。小説やエッセイを中心に、毎日をより楽しく過ごすための、さまざまなコンテンツをお届けします。

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