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『ぼくとねこのすれちがい日記』ができるまでの話【後編】/北澤平祐インタビュー

 数々の書籍装画や絵本、洋菓子「フランセ」のパッケージ、「アフタヌーンティー」の雑貨シリーズなど、多方面でいま引っ張りだこのイラストレーター・北澤平祐さん。『ぼくとねこのすれちがい日記』刊行を記念して、前回に引き続き、作品の誕生秘話をうかがいました。

 ブックデザインを手がけた名久井直子さんのコメント、カバーデザイン完成のプロセス、貴重なラフ画、本に仕込んだたくさんの「仕掛け」など、作品をより楽しめる裏話満載でお届けします。

ブックデザイナー・名久井直子さんが加わり、いよいよ書籍化

 2020年秋から、書籍化に向けた全体の再構成、改稿、イラストの手直しなどの作業がスタート。担当編集と協議の結果、タイトルもよりシンプルに変更しました。そしてブックデザインは、北澤さんからの強い希望で名久井直子さんに依頼します。

「名久井さんとは何度かお仕事しているんですが、毎回いい意味でぎゃふんと言わされるんです。ちょっとした視点の変更や角度の違いとかで、何倍も素晴らしいものにしてくれる。『ぼくねこ』の装丁だと、カバーにこの緑の装飾を入れることはまず思いつかなかったので感動しました」

 本の「顔」であるカバーデザインの打ち合わせには、あえて北澤さんが考えたラフを見せずに臨みました。「ぼくの案を先に見せたら、採用してくれちゃうかもしれない、それではつまらないと思ったんです。そうしたら、名久井さんからも似た構図の案が出てきてびっくりしました! でも、名久井さん案はふたりの向きをちぐはぐにすることでさらに『すれちがい』を表現されていて、やっぱり一枚上手だなあと思いました」

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最初の北澤さん案。日記帳の部分にタイトルが入るイメージ。

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名久井さんとの打ち合わせを経て、北澤さんが描いたラフ。タイラとホワンが、別の世界線に存在しているような構図。

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ラフその2。この後、右開き(縦書き)の設定で進めていることに気づいた北澤さんが、大慌てで修正したという裏話も……!

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カバー装画が完成。絵には緑の装飾は入っていない。

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こちらが完成形。

そして怒涛の描き下ろしがはじまった

 一方の名久井さんからはこんなコメントが。
「北澤さんとは、何度かお仕事をさせていただいておりますが、打ち合わせがとにかく楽しいんです。わたしのちょっとした提案に、何倍も素敵に返してくださいます。フレキシブルなご対応に甘えて、ついついこちらも欲が出てしまいます。そして出来上がりの絵を拝見すると、さらにこうきたかー! と毎回楽しい気持ちになってしまうんです」

 たとえば本書の文章ページには、「ぼく」「ねこ」「ねこようせい」それぞれのアイコンがあります。名久井さんからの「3にんとも、大きさや顔の向きのパターン違いが3つくらいずつあると楽しいですよね」という提案に対して、北澤さんはなんと全ページちがうアイコンを描き下ろし! よく見ると、最初のほうのホワンは小さくあどけない表情、後半では大きくふてぶてしい姿に変わっていきます。ねこようせいも、紹介することわざの内容に合わせて姿が変化しています。

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「文章のページにアイコンを入れる」という案を北澤さんが思いついた瞬間のメモ

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ねこようせいのアイコンの一部。それぞれ、どのページのどんなことわざでしょうか?

 他にも、物語が進むにつれて日記帳のページ数もちゃんと増減していくように描いてあったり(これはぜひ本書を見て確かめてほしい)、カバーを外した表紙が「実際にタイラとホワンが使っていた日記帳」になっていたり……宝探しのように楽しめる仕掛けが満載です。

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カバーを外した表紙の全体像。「ちょっと古風でエレガントな日記帳を、ふたりはラフに使っているようです。ホワンがひっかいた痕(あと)もありますね」

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北澤さんの手書きタイトル。本の扉に採用されたのはどの字でしょう?

 こうして完成した「ぼくねこ」がいよいよ発売です。最後に北澤さんからのメッセージを。

「ねこ好きさんにも犬好きさんにも、ねこが好きじゃない人にも、楽しんでもらえる本になったと思います。絵本なのかエッセイなのか小説なのか、ジャンル分けがむずかしい本なんですけど……本の帯に『ねこの絵本』とあるように、幅広い意味での絵本だと今は思っています。ねこサイドの日記はぜんぶ平仮名なので、漢字が読めないお子さんもねこサイドと絵だけ読んでいくことができるし。いろんな人に、いろんな楽しみ方をしてもらえたら嬉しいです」

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おわり

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『ぼくとねこのすれちがい日記』ができるまでの話(全2回)

北澤平祐(きたざわ・へいすけ)
イラストレーター。東京都在住。カリフォルニア州立大学フラトン校にてBFA(Bachelor of Fine Arts/Illustration)、同大学院にてMA(Master of Arts/Illustration)取得。アメリカに16年暮らし、帰国後イラストレーターとして活動を開始。書籍装画、広告、CDジャケット、商品パッケージなど国内外の幅広い分野でイラストを手がける。著書に『キャラメルゴーストハウス』(共著・かさいたつや)、『こはるとちはる』(文・白石一文)、『どんどんどんどんまいご』(文・相良敦子)等。
Twitter:@nevermindpcp

北澤さんの新刊をもう一冊ご紹介

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2021年7月発売予定 絵本『ゆらゆら』
みんなを しあわせに してくれるのは
のんびり のろまな ながれぼし
講談社刊・定価1,595円(税込)

担当編集者からひとこと
「せわしない一日の最後に手にとりたい、かわいい絵本ができました。北澤さんのやさしさが本から伝わってきて、読み終わるとやさしい気持ちに」

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「ぼくねこ」と『ゆらゆら』の発売を記念して、北澤さんがコラボアイコンを描き下ろしてくれました。招きねこと流れ星の幸せコンビ! ホワンが何を持っているのかは、「ぼくねこ」を読むとわかります。

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