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猫と亡き父に教わった、うまく"あきらめて"楽に生きる知恵。村山由佳『命とられるわけじゃない』3月26日(金)発売

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この本について

今はたとえ辛くとも、1日また1日をどうにかやり過ごして生きてさえいれば、その先で、思いもよらなかった恩寵が与えられることだってあるのだ──。

本サイトで連載していた、村山由佳さんの『命とられるわけじゃないが、3月26日(金)に単行本として発売されます。愛猫〈もみじ〉との最後の一年が綴られた『猫がいなけりゃ息もできない』に続く、魂ふるわすエッセイです。

NHK『ネコメンタリー』や『猫がいなけりゃ息もできない』で知られる最愛の猫〈もみじ〉を看取ってから1年後、平成最後の春。確執の深かった母を亡くした著者は、葬儀で1匹の猫と出会う。その小さな猫が、止まっていた時間をふたたび動かして......。50代半ば、喪失からの再生を描く。今がしんどい人、老いゆく心身に向き合う人、大切なものを失った人、親との関係に悩む人、そして猫を愛するすべての人に贈る1冊。

【刺さるフレーズの数々】

「若さはそれだけで美しく尊いけれども、だからといって若いばかりが能じゃない」
「〈後悔〉と〈愛惜〉とは別のものだ」
「愛情は、限られた食糧ではない」
「譲れないことも、許せないことも、人生に一つか二つあれば充分」
「どれほどしんどく思えても、生きてゆく途上で起こるたいていのことは、そう──とりあえず、〈命とられるわけじゃない〉のだ」

猫と亡き父に教わった、うまく"あきらめて"楽に生きる知恵。波乱万丈の経験からつむぎだされた優しい箴言が随所に光る。

猫たちや軽井沢暮らしの写真を多数掲載】

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【味わい深い著者直筆コメントも必見】

inochi-torareru_0201のコピー

【掌編「銀次の言いぶん」も収録】

『猫がいなけりゃ息もできない』の「あとがき、てなに──もみじの言いぶん」に続き、本作にも「あとがき」に代わる猫視点の掌編を収録。村山家の最長老猫となったメインクーンの〈銀次〉が、「かーちゃん」と家族について14ページにわたって語ります。

本書の目次

 はじめに
1 雪も桜も舞い落ちて

 心の穴ぼこ/長い散歩/三度目の/春にゆく/生活の実感/対面
2 別れが出会いを連れてくる
 再会/もの言う瞳/なつかしい重み/お願い/神さま/うちの子に/命名/もみじのおかげ/もみじのしわざ
3 偶然という名の
 説明のつかないこと/〈後悔〉と〈愛惜〉/愛情は限られた食糧ではない/執筆と庭いじりと/平成最後の日
4 人の子のかわりでなく
 令和最初の日/難産/二匹目/三匹目/きっと、いたずら/再び、命名/母性神話と猫
5 愛を注ぐ器
 「ま、ええではナイカ」/生きものとの契約/命とられるわけじゃない
 おわりに──銀次の言いぶん
 本書に登場した猫たち

はじめに

 気がつけばかれこれ四半世紀以上、恋愛小説と呼ばれる物語を書き続けてきた。
 おかげで〈恋愛のエキスパート〉的な立ち位置で意見を求められたり、お悩み相談を受けたりすることが多々あるのだけれど、正直なところ私にはまったくその資格がない。
 だってそうだろう。もし本当にその道のエキスパートなのだとしたら、恋愛であれ結婚であれ、本来譲ってはいけないことまで相手に明け渡すという最低最悪の失敗を、あんなに何度もくり返すはずがないのだから。
 とはいえ、ありがたいことに今の私には、自分で言うのも何だけれどしっかりと地に足のついた生活がある。やっとだ。物書きとして仕事をするようになってから四半世紀以上かかってやっと、その実感を言葉にする自由を手に入れられた。
 願わくは、否応なく素顔が露わになるこうした文章の中でも、できる限り自分や人に噓をつかずに、今わかっている〈ほんとうのこと〉と向き合っていけるといいなあ、と思う。 今度こそはたぶんずっとのパートナーや、増えてゆくばかりの生きものたちとの暮らしについても、また血縁や、友人たちや、かなり苦手だけれど必要な世間とのやり取り、百のうち九十七くらいはしんどさのほうがまさる仕事、などなどについても、淡々と平常心で書きとどめていけるといいなあ、と思う。
 生きていくうちには呑み込みがたいことも起こるけれど、一つひとつ言葉に置き換えてゆくことで心に整理をつけて、やがて自分なりの妥当な落としどころを見つけられるといい。
 そんな具合に、我が身に起こることをできるだけそのまんま肯定してゆく姿勢を私に教えてくれるのは、じつのところ、「猫」だ。何の誇張でも比喩でもなく、子どもの頃から身近にいてくれた猫たちこそが、私にとっては世界のとっかかりであり、時にはすべてであったりする。
 だからまずは猫の話をしよう。
 ずっとそばにいたのに逝ってしまった最愛の猫と、きっかり一年後にめぐり合った小さな猫の話を。

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村山由佳『命とられるわけじゃない』
2021年3月26日(金)発売
体裁:四六判ソフトカバー/本文240P+カラー口絵4P
定価:1,650円(税込)
発行:ホーム社/発売:集英社
ISBN:978-4-8342-5345-0
装丁:望月昭秀+吉田美咲(NILSON)
カバーおよび本文写真:村山由佳
[電子書籍版は4月配信予定]

著者プロフィール

村山由佳(むらやま・ゆか)
1964年東京都生まれ。立教大学卒業。93年『天使の卵─エンジェルス・エッグ─』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で直木賞、09年『ダブル・ファンタジー』で中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞、21年『風よ あらしよ』で吉川英治文学賞を受賞。『放蕩記』『ミルク・アンド・ハニー』『猫がいなけりゃ息もできない』『もみじの言いぶん』など著書多数。
Twitter:@yukamurayama710

紹介されました

- 2021年4月12日「猫びより」2021年5月号のBOOKコーナーで紹介されました。

- 2021年5月5日「MORE」のウェブサイトで紹介されました。「猫を愛するすべての人に贈るエッセイ『命とられるわけじゃない』」

- 2021年5月7日「Precious」2021年6月号のBOOKコーナーで紹介されました。

おまけの猫動画

連載中に著者の村山さんが送ってくださった動画です。そこには〈もみじ〉亡きあとに出会った、小さな猫の姿が写っていました。

既刊紹介

猫がいなけりゃ息もできない
「もみじ、もみじ、愛してる。早く着替えて、また戻っておいで」 小説家と愛猫のさいごの一年を克明につづり、 大反響を巻き起こした傑作エッセイ。

もみじの言いぶん
「うち、ここにおるやん。そばにおって欲しいなぁ〜思たときは、ぜったい居てるねんで」17歳で今生を旅立った〈もみじ〉の軽妙洒脱なつぶやきが心に沁みる...フォトエッセイ。

晴れときどき猫背 そして、もみじへ
鴨川での田舎暮らしエッセイに、書きおろしの全編コメンタリーと写真の再構成を加えた豪華 コンプリート版。〈もみじ〉誕生秘話も収録。

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