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Cat Books/猫本

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猫の本、猫が出てくる作品、猫にまつわる話、をまとめています。
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#村山由佳

本と猫を愛する会社員のリアルな書店開業記|井上理津子/協力 安村正也 『夢の猫本屋ができるまで Cat’s Meow Books』(1)

ホーム社の既刊から、いま読んでいただきたい本をセレクトして紹介する「ホーム社の本棚から」。7月からは井上理津子/協力 安村正也『夢の猫本屋ができるまで Cat’s Meow Books』(2018年)を全5回でお送りします。 この夏開店4周年を迎える、三軒茶屋の「Cat’s Meow Books」は、会社員でもある安村正也さんが開いた猫本専門書店。本好きといっても関連業界の経験はなかった安村さんが、50歳を前になぜ書店を始めることになったのか。本書は、書店に精通しているノ

100年に一度のグランド猫の日記念  「ホーム社猫祭」 第1部

皆さん、毎年2月22日が「猫の日」と呼ばれているのはご存知でしょうか? そして今年の猫の日は、2022年2月22日。 なんと2が6つも並ぶ、100年に一度のグランド猫の日なのです。 ホーム社ではそんな特別な猫の日をお祝いすべく、会社を挙げて『100年に一度のグランド猫の日記念 ホーム社猫祭』を行うことになりました。 ここから先はそんなホーム社猫祭だけの特別な企画が目白押し。 猫好きのあなたも、たまたま覗いてくださったあなたも、ぜひ最後までご覧いただけたら嬉しい限りです。

【電子書籍】村山由佳『命とられるわけじゃない』4月22日(木)配信開始

4月22日、村山由佳『命とられるわけじゃない』の電子版の配信が始まりました。 本書は、作家・村山由佳さんの、パートナーや猫たちとの軽井沢暮らしの中で紡がれた、優しくも鋭い箴言が随所に光るエッセイ集です。3月に刊行した紙版は、雑誌「猫びより」のBOOKコーナーでさっそく紹介されました。書店によっては、今年の吉川英治文学賞を受賞した長編小説『風よ あらしよ』と並んで展開されるなど、注目を集めています。 この本の「はじめに」を、HBのリンク先のページに全文掲載しています。まだご

猫と亡き父に教わった、うまく"あきらめて"楽に生きる知恵。村山由佳『命とられるわけじゃない』3月26日(金)発売

この本について今はたとえ辛くとも、1日また1日をどうにかやり過ごして生きてさえいれば、その先で、思いもよらなかった恩寵が与えられることだってあるのだ──。 本サイトで連載していた、村山由佳さんの『命とられるわけじゃない』が、3月26日(金)に単行本として発売されます。愛猫〈もみじ〉との最後の一年が綴られた『猫がいなけりゃ息もできない』に続く、魂ふるわすエッセイです。 NHK『ネコメンタリー』や『猫がいなけりゃ息もできない』で知られる最愛の猫〈もみじ〉を看取ってから1年

村山由佳×姜尚中「猫がいなけりゃ……」──村山由佳『晴れときどき猫背 そして、もみじへ』刊行記念対談

最愛の三毛猫〈もみじ〉との日々と看取りを綴った『猫がいなけりゃ息もできない』『もみじの言いぶん』(ホーム社)が大きな反響を巻き起こした村山由佳さん。房総・鴨川での田舎暮らしと猫との「事はじめ」を綴ったエッセイの増補新装版『晴れときどき猫背 そして、もみじへ』(ホーム社)刊行を記念し、集英社の読書情報誌「青春と読書」誌上で姜尚中さんとの対談が実現しました。 実は姜尚中さんもまた、近刊『母の教え 10年後の「悩む力」』(集英社新書)のなかで、転居した軽井沢での高原暮らし、初めての

うち、ここにおるやん。村山由佳さんのフォトエッセイ『もみじの言いぶん』発売中

この本について 17歳で今生を旅立ったあの子が見てきた世界とは。 作家・村山由佳さんの盟友で、たくさんのフォロワーから愛された三毛猫・もみじ。2018年3月、もみじは17歳で今生を旅立ちました。彼女の軽妙洒脱な関西弁のつぶやきが、時にユーモラスに、時に厳しく、時に切なく……私たちの心に沁みこんできます。大切な存在を失った「その後」をどう生きるか――そのヒントがここに。オールカラーのフォトエッセイ。 連載最終回にTwitterでお寄せいただいた声・勇気を持って一歩踏み出せそ

村山由佳 もみじの言いぶん 第5話「わからせる」

 腹立った時はな。無理に我慢したらあかん。  遠慮して、言いたいこと飲みこんで、おなかに溜めといたところで、あとから大爆発すんねやったらおんなじこっちゃろ? それやったら、ふだんから小爆発でガス抜きしといたほうがなんぼかマシや。  大事なことはな、「今うちは怒ってんねんで!」いう事実と、「こっから先は絶対譲ったげへんで!」いう境界線を、いやっちゅうほど相手に思い知らせたるこっちゃ。  言うてもわからんようなら、わかるまで断固として口きいたれへん。背中向けて、呼ばれても無視し続

村山由佳 もみじの言いぶん 第4話「爪をととのえる」

 かーちゃんが小学校に上がった頃やから、おおかた半世紀も前の話やけどな。  新しく買(こ)うてもろた赤いランドセルが嬉しゅうて嬉しゅうて、後生大事に枕もとに置いて寝たんやて。  朝起きたら、どないなってた思う? 当時、家におった〈チコ〉いう名前の猫が、夜中に乗って爪とぎしよって、ふたが一面おろし金みたいにバリバリの傷だらけやがな。  一年生のかーちゃんはめっちゃ悲しかったけど、ここで泣いたらチコがかーちゃんのかーちゃんに怒られる、思(おも)て我慢して、そのランドセルで六年間通

村山由佳 もみじの言いぶん 第3話「花は咲く」

 若い時分はうち、ほんまによう遠出しとった。  放浪癖っちゅうのかいな。家から一歩出たとたんに、散歩やら旅やら区別つかんようになりさらして、時間も日にちも忘れてほっつき歩いてまうねん。  今考えたら、かーちゃんめっちゃ心配しとったやろなと思うけど、反対にうちのほうが待たされることかてぎょうさんあったから、おあいこやん、なあ?  年とってからはもう、外へは全然出ぇへんようになってしもたし、たまに抱っこしてもろて外の世界を眺めるのんは、なかなか愉(たの)しかったで。  今年もそろ

村山由佳 もみじの言いぶん 第2話「ずっと一緒」

 うちのかーちゃんな。言うたら何やけど、アカンタレやねん。うちがそばにおらんようなってすぐの頃なんか、べそべそ、じめじめ、ほんま鬱陶(うっとう)しかってん。  皆さん、知っとる? あのボトル型のネックレス。中に、〈これってもしかして天使の骨やないん?〉いうくらい神々(こうごう)しいうちの骨を納めたあのネックレス。  ガラスやし、あの女のこっちゃからカクジツに落として割るやろ? ふだん家におる間は、危なかしゅうて身に着けられへん。  せやけど、な、これやったら心配要らんのんちゃ

村山由佳 もみじの言いぶん 第1話「安眠妨害」

 どちらさんも、ご機嫌さん。もみじですー。しばらく留守しとってかんにんやで。  ここな、最近のうちの居場所。  かーちゃんととーちゃんが毎日、前を通るたんびに、 「もみちゃん、おはよ」 「今日も可愛(かい)らしねえ」 「行ってくるわな。すぐ帰るから待っときや」 「おやすみ、もみじ。夢に出てきてな」  て、しょっちゅう話しかけてくるから、ぜんぜん淋しないねん。ちゅうか、むしろ安眠妨害やっちゅうねん。正味の話。  あとな、二人とも気づいてないみたいやけど……  ベッドの上、こっか

愛猫とのさいごの1年が綴られた心ふるえるエッセイ。村山由佳『猫がいなけりゃ息もできない』発売中

この本の内容 「思えば人生の節目にはいつも猫がいた」 小説家と愛猫の最後の一年をつづった、心ふるえるエッセイ。 房総・鴨川での田舎暮らしを飛び出して約15年。度重なる転機と転居、波乱万丈な暮らしを経て、軽井沢に終の住まいを見つけた村山由佳さん。当初2匹だった猫も、気づけば5匹に。中でも特別なのが、人生の荒波をともに渡ってきた盟友〈もみじ〉。連載のさなか、そのもみじが、ある病に侵されていることが発覚して──。 著者と猫たちが出演したNHK「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」も大

村山由佳 猫がいなけりゃ息もできない 第10話「今この瞬間こそが、人生でいちばん若い」

 ともあれ、猫の話だ。  作家生活10年目にかなりの無理をして手に入れ、自力で開拓して緑の楽園にした広大な農地と、全身全霊を傾けて造りあげた家、そして農場に不可欠の動物たちを、旦那さん1号のもとに残して房総鴨川を後にする時──私は、前にも書いたとおり、小柄な三毛猫を1匹連れていた。  それが、今も我が家にいる最長老17歳の〈もみじ〉さんである。  なんとなく敬称付きで呼んでしまうことが多いのは、人間に換算したら85歳くらいの大先輩だからなのだが、連れて出た当時はまさか、ここ

村山由佳 猫がいなけりゃ息もできない 第9話「催眠誘導」

 子どもの頃から私は、自分の態度や言葉によって誰かの気分を害してしまうことがこの世の何より苦手だった。原因がたとえ自分でなくても、相手が怒っているという状況、それだけでいたたまれなかった。  だから、目の前に不機嫌な人がいると、悪いことなんか何もしていなくても謝ってしまう。何とかして機嫌を直して欲しいと思うあまり、慌てて先回りしては下手に出てしまうのだ。  夫婦の間でもそうだった。  別々の人間がひとつ屋根の下で暮らしていれば、こまごまとした対立が起こらないほうがおかしいのに