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Author Talks

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作家のインタビュー、対談、書店トークイベントなどをお届けします。著者の新刊の話を中心に、テーマやゲストは多岐にわたります。
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#わるい食べもの

岡田育×千早茜『しつこく わるい食べもの』刊行記念対談 第5回「共感とは真逆の、ポジティブななにか」(全5回)

千早茜さんの食エッセイ第2弾『しつこく わるい食べもの』刊行を記念して、ニューヨークと日本で活躍する文筆家・岡田育さんとの初対談が実現しました。5回にわたりお送りしてきた対談連載、最終回は神保町の老舗甘味処「大丸やき茶房」さんからお届けします。 構成=編集部/撮影=山口真由子 ※対談はマスク着用の上で実施し、終了後にお菓子をいただきながらソーシャルディスタンスを確保して撮影しました。 SNS時代のエッセイとは?千早 エッセイを出すと、SNSやイベントで、感想ではなく「自分

岡田育×千早茜『しつこく わるい食べもの』刊行記念対談 第4回「結婚と料理と自由と」(全5回)

コロナ禍にエッセイをどう書くのか問題──岡田さんの近著『女の節目は両A面』も、節目や変化がテーマです。千早さんの『しつこく わるい食べもの』も、中盤からはコロナ禍という変化に向き合っていくエッセイですね。 岡田 『しつこく わるい食べもの』の中でも、コロナ禍の、タイムスタンプつきの箇所はとくに面白く読みました。 千早 感染が拡大して緊急事態宣言が出たりするなか、連載を続けられないかもと騒いで、またT嬢に説得されまして……。日付を入れるということで、やっと書けるようになりま

岡田育×千早茜『しつこく わるい食べもの』刊行記念対談 第3回「大人げない方向で生きていこうぜ」(全5回)

大人げない方向で生きていこうぜ千早 岡田さんは『ハジの多い人生』に、「自分を制御できているなんて考えていた自分は本当に愚かで幼かった」みたいに書いていますよね。読むたびに、自分の幼さや愚かさを突き付けられているみたいで「ひーっ!」となっています。岡田さんはちゃんと大人でちゃんと分析的だけど、私の「わるたべ」はなんていうか……大人げない。大人げない方向で生きていこうぜ、って言ってしまっている。 岡田 いいんですよ。千早さん、大人げない内容でも、大人っぽい語彙と文体でズバッと書

岡田育×千早茜『しつこく わるい食べもの』刊行記念対談 第2回「コロナで生じた言葉の変化」(全5回)

登場人物に作者の食生活は透けてみえるのか問題岡田 解像度の高いチハヤ・アイは、もともと小説を書く武器の一つとしてお持ちなんじゃないかと思いますね。私は短絡的な読者の一人なので、例えば何かが好物だというキャラクターが出てきたら、そうかきっと作者の人もこれが好物なんだろうなと思ってしまいます。でもエッセイを読むと、千早さんご本人にはまた全然違うところにこだわりがあって。小説を創作するというのは本当にすごいことなんだなと、逆にエッセイを読んで思ったりもしました。 千早 そういう作

岡田育×千早茜『しつこく わるい食べもの』刊行記念対談 第1回「食への情熱と解像度」(全5回)

ツイッターと餃子でつながった仲──おふたりの出会いは? 千早 この本の「金針菜、こわい」に書いたんですが、代々木上原の按田餃子(あんだぎょうざ)で金針菜を食べたんですよ。それが美味しかったとツイートしたら、初めて岡田さんが反応してくれて。相互フォローはしていたものの、それまで話しかけられずにいたんですが、そこからは積極的に話しかけるようになりました。 岡田 ラゲーライスですよね。私あの辺に住んでいたことがあって、トレンドに疎いものですから「おらが村のおいしい餃子屋さんだぜ